「必殺!」(その8) [映画(邦画)]
今回は、15年続いたTVシリーズが終了し、4年ぶりにTVシリーズが復活したことら合わせて製作された作品と、中村主水の最期ということを前面に出した作品の2本です。(主水を中心とした「必殺」劇場版では、第5作と第6作です。)
シリーズ第5作「必殺! 5 黄金の血」(1991年)
作品データを記しておくと、1991年の松竹、朝日放送、京都映画による作品で、時間は104分である。監督は舛田利雄、脚本は吉田剛、撮影は石原興、美術は倉橋利昭、音楽は平尾昌晃である。そして出演は、藤田まこと、村上弘明、三田村邦彦、光本幸子、山本陽子、大沢樹生、名取裕子、酒井法子、西岡徳馬、岸部一徳、山本陽一、保坂尚輝、佐藤蛾次郎、キューティー鈴木、尾崎魔弓、麻丘めぐみ、安岡力也、白竜、白木万理、菅井きん、たちである。
仕事人の顔ぶれは、TVで放送された板「仕事人 激突」のメンバーに政が加わったという形である。但し、夢次を演じたのはTVシリーズの中村橋之助ではなくて山本陽一が演じている。物語は、自分の出世のために罪もない町人たちを虫けらのように殺しては、金相場のはね上げで甘い汁を吸おうとする勘定奉行一味と仕事人たちの攻防を描いたものである。
金を積んだ御用船が佐渡沖で何者かに襲われた。仕事人である鎌イタチのおむらは、主水たちの反対も聴かずに殺された乗組員らの仇を取って欲しいという金座・後藤家の女当主・千勢の依頼を受けて仕事に向かう、が、謎の黒装束の集団・地獄組に襲われて、おむら一人だけが生き残った。そんな頃、新月の夜、砂丘に不思議な光が立ち昇って、江戸の町は大騒ぎとなった。この光は無宿人を雇ってわざと御用船を襲わせた後藤家一味が密かに隠し埋めた金の光だった。ということで、主水たちは勘定奉行・太田と結託した後藤家の悪事を知り、立ち上がった。
劇場版らしい展開ではあるが、この頃になると、TVのスペシャルもあったことから、今ひとつ劇場版にする必要があったのか?と感じてしまう。一応、TVシリーズのレギュラーだった政の最期がある、というところがTVスペシャルとの違いと言った所ですね。それ以外はTVスペシャルと対して変わらない内容である。
シリーズ第6作「必殺! 主水死す」(1996年)
作品データを記しておくと、1991年の松竹と松竹京都による作品で、時間は100分である。監督は貞永方久、脚本は吉田剛、撮影は石原興、美術は倉橋利韶、音楽は平尾昌晃である。そして出演は、藤田まこと、三田村邦彦、菅井きん、白木万理、中条きよし、名取裕子、東ちづる、細川ふみえ、野村祐人、宝田明、美保純、津川雅彦、柏木由起子、鈴木清順、たちである。
仕事人仲間のおけいと不義を重ねていた中村主水は、家庭を捨てる覚悟をして新たな生活をする準備をしていた。そんな中で葛飾北斎が謎の死を遂げ、娘・お栄は主水に相談した。主水は北斎の描いた似顔絵にそっくりの大道芸人・捨蔵に町で出会う。(捨蔵は実は女であって、三味線ひきの養母・お夢(記憶を失っているが、主水の昔なじみの仕事人・お千代)に育てられた。)一方、大奥では上臈年寄・姉小路が元老中・水野忠邦と組んで、将軍家世継となる家定の双子の片割れを捜してお家乗っ取りを企てていた。その動きを察知した家定の母・お美津は大奥掃除人の元締め・権の四郎とその息子・清太に双子の片割れの抹殺を命じ、清太はそれをおけいに依頼した。が、その双子の片割れというのは捨蔵のことだった...
展開はいつもの劇場版の展開とは少し違っていて、大奥の陰謀に仕事人たちが巻き込まれ、それと同時に主水の新たな過去の因縁が分かり、主水の最期に向かって行く。で、ポイントになる主水の最期であるが、ある意味では主水らしい最期であった。爆死ということで片付けられるが、それだけではなくてどんでん返しが考えられていたのでは?と思ってしまう。
本作も10年以上前の作品であり、そのどんでん返しから始まる物語は生まれていないので、主水も最期を迎えた、ということで良いんでしょうね。尚、2007年のスペシャルに主水は復活したが、主水の登場する時代設定は江戸時代ではあるが、複数の時代でパラレル・ワールドになっているので、本作の主水とは別の時代の中村主水は生きているということで...
今回取り上げた2作は、TVシリーズのレギュラーだった政、主水が最期を迎える、ということで、一応はTVスペシャルとの差別化が行われているが、それをイベントの様にしてしまった作品ということになる。時代は昭和から平成になり、昭和という雰囲気を背負っている「仕事人」たちも時代の変化の前に散っていったということですね。
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