「人生劇場」(その9) [映画(邦画)]
今回は、'70年代になってから製作された作品で、1972年の松竹作品についてです。劇場公開は1972年7月であった。尚、「人生劇場」はこれまでに何度も映画化されている、'70年代では本作のみである。また、本作は内容的にも高く評価されている1本でもある。タイトルから分かるように本作は原作の「青春篇」「愛欲篇」「残侠篇」を描いているが、尺の関係もこあるため、けっこう端折っている所があるのも事実である。(「風と共に去りぬ」と同様の部分があると言うことです。)
「人生劇場 青春篇 愛欲篇 残侠篇」(1972年)
作品データを記しておくと、1972年の松竹作品で、時間は167分、原作は尾崎士郎、監督は加藤泰、脚本は野村芳太郎、三村晴彦、加藤泰の3人、撮影は丸山恵司、美術は森田郷平、音楽は鏑木創である。そして出演は、竹脇無我、森繁久彌、田宮二郎、高橋英樹、渡哲也、倍賞美津子、香山美子、笠智衆、津島恵子、田宮二郎、草野大悟、谷村昌彦、石井トミコ、石井均、小田草之助、高畑喜三、伴淳三郎、大泉滉、高木信夫、小峰陽子、萩本欽一、任田順好、田中春男、川島照満、武藤章生、汐路章、河村有紀、秋山勝俊、菅井きん、山岸映子、高木均、北竜介、江藤孝、柳沢真一、沼田曜一、坂上二郎、村上記代、たちである。
時は大正5年、10年ぶりに吉良常が戻って来た。彼はやくざの杉原を殺して服役していたのだった。が、吉良常が主人として仕えていた肥料問屋辰巳屋の当主・瓢太郎は、今では没落していて、その夜、ピストルで自殺した。遺書として「立派な男となるまで墓を建つるに不及」というものを息子・瓢吉に残していた。その瓢吉は、上京して、文士になるための勉強をしていたが、父の訃報を知らされると、同棲していたお袖を残して、急いで帰郷した。父の葬式の日、吉良常は杉原の仇討ちを狙う杉原一家の者に連れ出されたが、瓢吉が駆け付けてその場は何とか収まり、葬儀が済むと、瓢吉は吉良常を連れて東京に戻った。
3年後、東京・深川を縄張りとしている小金一家は、新興やくざの丈徳のやり方に業をにやし、殴り込みをかけた。子分の宮川や客人・飛車角の活躍で勝利を得たが、飛車角が女郎屋から足抜きさせた愛人・おとよが、飛車角の兄弟分・奈良平の裏切りで女郎屋に連れ戻され、飛車角が奈良平を刺殺した。で、警察から追われる飛車角が偶然、瓢吉の家に飛び込んできた。吉良常と意気投合した飛車角は、吉良常の説得で自首をした。そんな頃、瓢吉は懸賞小説に当選した。また、作家の山岸照代と関係が続いていたが、今は女給となっている、分かれたかつての恋人・お袖と再会した。
大正11年、宮川は女郎屋に通い詰めていて、飛車角の愛人とも知らずにおとよと愛し合っていた。が、まもなく宮川はその事実を知ることになる。そんな時、丈徳一家の生き残りのでか虎が小金一家に殴り込んできて、小金を殺した。
翌年、作家になっていた瓢吉は、出版社の援助で(中国)大陸に渡る。そして上海で吉良常と会った。吉良常は、瓢吉の父・瓢太郎の墓を今こそ建ててくれと、自分で稼いだ金を瓢吉に渡した。
昭和2年、刑務所にいた飛車角が出所してきた。吉良常が迎え、家に戻ってくる。そこで待っていた宮川は、おとよのことを詫びた。飛車角はおとよへの愛を必死に耐えた。そして、その日、3人は、でか虎一家に殴り込んで、小金親分の仇を討った。しかし、仇を取ったものの、宮川はその時に殺されてしまった。
今や、作家として成功していた瓢吉が「吉良常危篤」の報を受けた。それは彼の盛大な出版記念会の席上だった。瓢吉は急いで故郷に駆けつけた。すると、そこには飛車角の他に、おとよ、お袖もいた。おとよは土地の芸者となっていて、お袖は料亭吉良屋の女将になっていた。旧知の人たちが見守る中、吉良常は浪花節を口にしながら逝ったのだった。
物語としては、「人生劇場」の骨格といえるところをたっぷりと描いているということで、大河ドラマとしての重みもあって良いのだが、次々と起こる出来事が余りにも規則的に起こるところがマイナスポイントである。もう少し緩急を付けて出来事が起こった方が、より重厚さが出るだけに、この点だけが残念なところである。(これは、4時間弱の大作「風と共に去りぬ」にも見られたことであって、長尺の大河ドラマ作品にはこの傾向があることが多い。まあ、この傾向が見られるというのは、それだけ内容があって、詰め込んでいるということでもあるのですが...)3時間弱の長尺作品であるが、もう少し時間を費やして、3時間を越える程度の作品にしたら、この印象は薄まることになったと思いますが...(但し、時間増加分をカットしたエピソードを追加するのであれば意味は無いですが...)
大作として、見応えがある作品であるが、緩急を付けて鑑賞したら、作品世界をより深く堪能出来る作品である。各自で工夫してみましょう。
↓原作小説
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