「FAHRENHEIT 451」 [映画(洋画)]
SF作家として知られているアメリカの作家・レイ・ブラッドベリの訃報が届いたということから、彼の原作小説の映画化作品を取り上げることにします。1920年8月22日生まれということで、91歳でした。ご冥福をお祈りします。
レイ・ブラッドベリというと、「火星年代記」と「華氏451」が余りにも有名である。特に「火星年代記」は、地球人が火星に行き、火星人と対立していくだけでなく、植民地化、地球での全面戦争など、発表された当時(1950年)の世相を色々と取り入れた風刺もあって、SF小説としてだけではないシニカルな作品でもありました。しかも、「火星年代記」の物語は、1999年から2026年の出来事として描かれているため、現在の時間は正にその中にあるということなんですよね。(が、現実世界では、まだ人類は火星に到達していないですが...)
また、火星人ということでは、日本のSF作家の草分的な作家である海野十三(うんの・じゅうざ、1897年生まれ)の作品にも色々と火星が出てきていたこともあって、昔から火星はSF小説では定番の舞台でもありました。で、その「火星年代記」はアメリカでテレビのミニ・シリーズ(全3話)になっている。
そして、それと共に彼の代表作である「華氏451」(1953年発表)が1966年年に映画化されていて、'60'sの独特の雰囲気に満ちた近未来の物語として面白い作品に仕上がっている。(しかも監督はトリュフォー監督ですし...)ということで、追悼としては「華氏451」を取り上げることにします。
表題の作品は1966年のイギリスとフランスの合作映画「華氏451」である。日本での劇場公開は1967年12月であった。「火星年代記」と共にレイ・ブラッドベリの代表作である小説の映画化作品である。活字が禁じられた近未来の管理社会を描いたSF作品である。
尚、「華氏451」とは、紙が燃え始める温度であって、摂氏に換算すると約233度である。(しかし、原作小説を含めて邦題を摂氏に換算した「摂氏233」というタイトルのものは無かったですね。)また、J・クリスティの二役も見所の一つである。
作品データを記しておくと、時間は112分、原作はレイ・ブラッドベリ、監督はフランソワ・トリュフォー、脚本はフランソワ・トリュフォーとジャン・ルイ・リシャールの2人、撮影はニコラス・ローグ、衣装デザインはトニー・ウォルトン、音楽はバーナード・ハーマンである。そして出演は、オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ、シリル・キューザック、アントン・ディフリング、ジェレミー・スペンサー、アレックス・スコット、たちである。
全てが機械化され、書物が禁止された近未来。人々は知識や情報は、全てをテレビから伝達され、それに従っていれば平和な生活が保障されていた。その一方で、書物は完全に禁止されていて、その所持は禁止され、発見されると消防士によって直ちに焼却処分されるという管理された世の中になっていた。そして、消防士として働いているモンターグは、ある日、妻・リンダと瓜二つの若い女・クラリスと知り合った。が、リンダはテレビからの情報をそのまま受けているだけの無気力で空虚な生活をしていたが、クラリスは本に熱意を持っていて、積極的に生きているということで、モンターグはとても刺激的に感じた。で、クラリスが興味を持っている本に触れ、生まれて初めて本を読むと、その魅力に取りつかれ、隠れて読書をするようになった。しかし、夫が読書をしていることを知ったリンダは、そのことを密告した。そんなことは知らないモンターグは、消防士を辞める決意をして隊長に申し入れたが、今日だけはどうしてもと言われ、出動した。が、行き先は彼の自宅だった。で、庭には隠されていた書籍が積まれ、それを焼き捨てるように命じられたモンテー具は、本だけでなく、家ごと焼いてしまおうとした。それを察知した隊長は彼を止めて逮捕しようとしたが、モンターグは手にしていた火炎放射器で隊長を焼き殺してしまった。これによってモンターグは殺人犯として追われることになり、逃亡するモンターグ。そんな彼が辿り着いたのは、クラリス゛話してくれた「本の人々」が住んでいる場所だった。そして、そこには、全ての書物が焼かれても、それを後世に残すために、本に書かれていた内容を全て暗記していた人、則ち「本の人」がいたのだった。モンターグは遂に本を読む自由を手に入れ、そして、彼の気に入ったエドガー・アラン・ポーの本の暗誦を始めるのだった...
本作では、「本」が禁止された世界であって現実とは異なっているが、現実の世界では、「本」は禁止されていないが現在は衰退しつつある状況である。しかも、現在はインターネットによって情報がレ流が、物語ではそれがテレビということになっていて、どことなく、現実の世界を見据えている様に感じられる。また、テレビも大型で薄型(壁に埋め込まれていたりする。)のものということで、やはりこれも現実の未来を予感させている。
管理された社会を皮肉ったり、警鐘を鳴らした作品は数多いが、本作は余りにも(当時の)未来(数十年後)の姿、それは21世紀の現代社会であるが、それをありありと捉えて映像化しているのは凄いところである。(ただ、'60'sの作品ということで、'60'sの発想、またはその延長線上のものという所も多々ありますが...)
余りにも未来世界の設定が、現実に似ていたり、似ていると解釈できるところが多い本作であるだけに、じっくりと見ておきたいところである。
尚、原作小説も、出来ることであれば読んでおきたいところである。
↓原作小説はこちら
彼の他の作品もいくつか拾っておきます。
お菓子の髑髏: ブラッドベリ初期ミステリ短篇集 (ちくま文庫)
- 作者: レイ ブラッドベリ
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2012/05/09
- メディア: 文庫
↓名前を出したので、こちらもいくつか...(ただ、彼の作品は「青空文庫」にいけば無料でDLできます。)
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