HOWARD JONES『IN THE RUNNING』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1992年に発表された彼の5枚目のアルバムである。('90'sに入ってからは初のアルバムということになる。)1989年に発表した前作でも往年の勢いが無くなっていたが、本アルバムでは更に苦戦して、遂に本国イギリスでもチャートインを果たせないということになってしまった。(本アルバムからのシングル曲は一応チャートインを記録している。)サウンドの方も、'80'sの勢いのあった時期のもの(典型的なエレポップ)とは全く違うものになっていて、アコースティック系のものになっている。当時はそれが受け入れられなかったということにもなったが、発表から20年以上の時が流れた現在では、そのサウンドの変化がアーティストらしくなった変化として受け止められるようになり、近年、再評価されるようになったアルバムでもある。
収録曲は以下の全10曲である。『Lift Me Up』『Fallin' Away』『Show Me』『The Voices Are Back』『Exodus』『Tears To Tell』『Two Souls』『Gun Turned On The World』『One Last Try』『City Song』。
この中からシングル・カットされたのは全部で3曲である。1st.シングルの『Lift Me Up』は、本国イギリスで最高位52位を記録し、アメリカではBillboardで最高位32位を記録している。(尚、アメリカでは、2013/12時点で、この曲が彼のシングル曲でチャートインを記録した最後の曲になっている。)続く『Two Souls』はドイツでのみチャートインを記録していて53位を録したが、それに続く『Tears To Tell』は全くチャートインを記録することが無かった。
お薦め曲は、シングル曲の『Lift Me Up』と『Two Souls』、それ以外からは本アルバムのアコースティック路線ということをじっくりと堪能出来る長尺曲の『Fallin' Away』と『City Song』をピックアップしておく。
'90'sに突入して、'80's後半に隆盛を極めたエレポップは勢いを失っていき、ヒットするメインストリームから外れる様になったのは事実である。また、本アルバムが発表された時期には、アメリカでは(何度目かの)カントリーの大ブームとなっていて、アコースティック系のサウンドが人気を集めるようになっていた。しかし、そのアコースティック系のアルバムである本アルバムは全く受け入れられなかった。確かに彼は'80'sのUKエレポップの雄として知られているだけに、'80'sの延長線上にあるサウンドを聴かせて欲しいと思うだけに、本アルバムは期待外れであったと言わざるを得ないであろう。が、そういう流行り廃りに由来する所は、時間が流し去ってくれるのである。現在ではアーティスト性という部分が評価されるようになって、再評価されつつあるのは嬉しいところである。
改めて聴いてみて、エレポップの雄が放ったアコースティック系サウンドをじっくりと堪能するのもまた面白いものである。そして、もっと再評価してもらいたいところである。
コメント 0