「忍びの者」(その3) [映画(邦画)]
本シリーズは、第4作からは主人公が霧隠才蔵に変わるが、今回は霧隠才蔵が主人公になった作品の1本目であり、シリーズ第4作となる1964年の「忍びの者 霧隠才蔵」についてです。物語の主人公は石川五右衛門から霧隠才蔵に変わり、信長/秀吉の暗殺を狙っていたが、今回は家康の暗殺を狙う物語に変わっている。が、主演は市川雷蔵のままである。時代も徳川の時代になり、大阪冬の陣(1614年)というところから始まる。
作品データを記しておくと、時間は87分、監督は田中徳三、脚本は高岩肇、撮影は武田千吉郎、美術は内藤昭、音楽は伊福部昭である。そして出演は、市川雷蔵、磯村みどり、城健三朗、中村鴈治郎、小林勝彦、成田純一郎、島田竜三、中村豊、須賀不二男、守田学、たちである。
大阪冬の陣(1614年・慶長19年)によって豊臣秀頼方は落日の色が濃くなった。家臣たちも主家の大事に馳せ参じる者も少くなり、真田幸村だけが九度山にこもっていた。家康は天下の覇権を急ぎ、条件に反して大阪城の内堀を埋めて秀頼らを苦しめる。霧隠才蔵は幸村に報告し、家康の行動を探ぐるために才蔵を駿府に、その息子・大助を島津に出す。が、大助は途中で家康側に寝返った彦八に襲われ、何とか才蔵に助けられる。何とかして駿府に入った才蔵は、追っ手に追われる中、今では遊女に身を落している腰元・茜と再会するが、直ぐに別れざるを得なかった。そんな中、幸村は家康暗殺を命じる。しかし、ことごとく失敗する。そんな家康は暗殺者の事など気にせずに、例年通りに華やかな花見の宴を催す。才蔵たちはここぞとばかりに家康暗殺を実行しようとする。窮地に追いつめられた家康だったが「影武者だ」と偽り、難を逃れ、またも暗殺は失敗となる。そして1615年(元和元年)、大阪夏の陣が始まる...
本作は、大阪冬の陣から夏の陣までの、豊臣家が滅んでいく影に動く忍者を描いている。史実に沿った所と、フィクションである所が混じっているのは、娯楽作品らしいところである。とにかく「豊臣秀頼や真田幸村は自害したとされているが、死体は何処にもなく、才蔵の漕ぐ船が何処ともなく去っていった」ということで、これが次作に繋がっていきます。
石川五右衛門を主人公にした前作よりも、本作は忍者のアクションに力を入れていて、「忍者は手駒にすぎない」という所から脱却して、娯楽作品としても十分に耐えられるような作品になった。
「ROPE」 [映画(洋画)]
表題の作品は1948年の映画「ロープ」である。この作品は、ヒッチコック監督の最初のカラー・サスペンス作品である。また、物語は1924年にシカゴで実際に起きたロープ&レオポルト事件を題材にした作品であり、映画内の時間進行と現実の時間進行を同じにすると言うヒッチコック監督の実験が行われた作品でもある。
作品データを記しておくと、時間は80分、原作はパトリック・ハミルトン、製作はシドニー・バーンスタインとアルフレッド・ヒッチコック、監督はアルフレッド・ヒッチコック、脚本はアーサー・ローレンツ、脚色はヒューム・クローニン、撮影はジョセフ・ヴァレンタインとウィリアム・V・スコールの2人、音楽はレオ・F・フォーブステインである。そして出演は、ジェームズ・スチュワート、 ファーリー・グレンジャー、ジョン・ドール、セドリック・ハードウィック、コンスタンス・コリアー、ダグラス・ディック、エディス・エヴァンソン、ディック・ホーガン、ジョアン・チャンドラー、たちである。
舞台はニューヨーク。大きな窓からマンハッタンの摩天楼が一目で見渡すことの出来るアパートの一室。ある日の夕方、この部屋で、フィリップとブラントンという大学を出たばかりの2人の青年が同級生だったデイヴィッドを絞め殺し、死体を衣装箱に入れるという殺人事件が発生する。二人は自分たちが人よりもスパ抜けて秀れていることを試したかったために殺人を犯したのだった。そんな2人は更なるスリルを味わうために、被害者デイヴィッドの父、恋人、恋仇だったケネス、伯母、先生だった大学教授をアパートに招いて晩餐会を催した。そして、死体の入った衣装箱の上にご馳走を並べてみんなに食べさせたり、殺人に使ったロープで幾冊かの本を縛って父親に贈ったりして、腹の中で優越感を味わっていた。が、時間が経つにつれてフィリップは犯した罪の恐ろしさに次第に冷静さを失っていく。一方、ブランドンは鋼鉄のような揺るがない神経の持ち主で、死体を教授に見せてやりたいというヒロイックな衝動に駆られる。そんな中、教授は2人の異常さに感づき、被害者の帽子を発見して殺人発覚の糸口を掴んだ...
物語の舞台はアパートの一室で、限られた場所だけであるが、殺人を犯した2人の様子が変わっていく様がリアルに描かれていて、緊張感に満ちている。スリルとサスペンスに満ちた作品である。
尚、ロープ&レオポルト事件を題材にした作品としては、1959年の「強迫/ロープ殺人事件」(リチャード・フライシャー監督、オーソン・ウェルズ主演)や1992年の「恍惚」(トム・カリン監督、クレイグ・チェスター主演)、2002年の「完全犯罪クラブ」(バーベット・シュローダー監督、サンドラ・ブロック主演)等があるので、見比べてみるのもまた面白い所である。
↓廉価版
侍ショートフィルム#1「想い」 [ドラマ]
BS-iとBS-FUJIによる「68FILMS」というショート作品集には「東京少年/東京少女」「美少年Hi」「侍ショート」というシリーズがある。いずれもが時間的には短い作品であり、最も短いのは4分、長いのは15分である。この度BS-iがこれらを「侍ショートフィルム」と題して放送してくれるということで、実に嬉しいプレゼントになりました。何せ、これらの作品はソフト化されていませんからね。
今回はその1回目ということで「東京少年/東京少女」から「それっきりだった」と、「侍ショート」から「華~HANA」の放送でした。「それっきりだった」はこれらの全ての作品(全23本)の中で最も時間の長い作品であり、「華~HANA」は「侍ショート」の5本の中では最も時間の長い作品である。(これを考えたら、時には3本放送する時があるでしょうね。)
まずは「それっきりだった」から。主演は「銭形泪」の黒川芽以さん。監督と脚本は古厩智之監督。(「銭形泪・1st.9話」の公開収録の時の監督です。)黒川さんの学ラン姿を見ることが出来ます。
高校の後輩・藤本がジャージ姿で駅のベンチで寝ている。そこにやってきた加奈子はベンチに置いてあった学ランを着ると、藤本を起こす。加奈子は藤本の仕草を色々とマネをするが...
実際に着たことがあるかは別にして、男ならセーラー服に、女なら学ランに、誰でも憧れを持ったことでしょう。そんな憧れの気持ちを背伸びすることなく描いた青春の1ページを描いた一編である。その後の二人はというと、タイトルが示すとおりだった、ということだったが、それも甘酸っぱい青春の思い出ですね。派手な所は無いが、良い雰囲気の優しい物語でした。それにしても芽以さんの学ラン姿、なかなか極まっていました。
次に、「華~HANA~」
浅草、手慣れた手つきでバイクを盗もうとしている女・ハナだったが、バイクの持ち主・トモロウが現れる。トモロウはハナをバイクに乗せてやり、銭湯やクラブなどにハナを連れて行く。行く先々にはどこも刺青の男たちばかりいた。やがてハナは、目にした赤い華の刺青を彫ってもらい...
物語よりも、刺青という一つの美を持ったものを追っていくストーリーで、映像美が楽しめる作品でした。
ここから先は資料と言うことで、3つのシリーズの作品について、簡単に記しておく。
「東京少年/東京少女」は以下の全9話である。尚、全9作の合計時間は95分30秒である。「東京タワー少女」(主演:栗田梨子)、「寄生木 YADORIGI」(主演:宮崎あおい)、「ライ麦畑でつかまえてでつかまえて」(主演:大場麻未)、「東京危機一髪」(主演:多部未華子)、「彼女の告白」(主演:岡田めぐみ)、「臭いものには蓋の日」(主演:小出早織)、「東京防衛少女紅子」(主演:辻美里)、「それっきりだった」(主演:黒川芽以)、「原っぱ」(主演:堀北真希)。「愛」「舞」「泪」「雷」という「ケータイ刑事」を襲名した4人がそれぞれ主演しているということだけでも注目であるが、それ以外でも凄い顔ぶれが揃っています。
「美少年Hi」は以下の全9話である。全9作の合計時間は74分30秒である。「April Fool」(主演:小林且弥)、「ラベル」(主演:山崎努)、「宇宙の法則」(主演:北条隆博)、「再先端恐怖ショウ」(主演:パパイヤ鈴木)、「trash」(主演:松尾政寿)、「こころのうた」(主演:ぜんじろう)、「ソワレの心臓」(主演:ソワレ)、「ロスタイムライフ」(主演:虎牙光揮)、「恋する梅干し」(主演:成宮寛貴)。この中では、「再先端恐怖ショウ」はおやじダンサーズと電撃チョモランマ隊のダンスバトルがありますし、「ソワレの心臓」は山田広野の活弁であり、注目したい所である。
「侍ショート」は以下の全5話である。全5作の合計時間は49分30秒である。「EMA~絵馬~」(主演:水橋貴巳)、「ROOM SERVICE」(主演:山咲千里)、「華~HANA」(主演:村上淳)、「PARKING!」(主演:モロ師岡)、「キラー・ジョー」(主演:有沢康博)。この中ではBS-iの看板作に主演している水橋貴己主演の「EMA~絵馬~」が注目です。
尚、次回のサブタイトルは「勘違い」となっています。「PARKING!」が放送されるようですが、時間のことを考えたら3本放送される可能性があります。(BS-iのHPが更新されたら、追記する予定です。)
(追記)
次回は3本立てです。放送されるのは「侍ショート」からは「PARKING」、「美少年Hi」からは「April Fool」、「東京少年/東京少女」からは「彼女の告白」です。が、この3本だったら30分枠だったら殆どCMなしにしないと収まらないのですが...
※今週から月曜の一番は、洋楽アルバムではなく「侍ショートフィルム」ということにします。
↓黒川さんのBS-i関係の出演作
ケータイ刑事 THE MOVIE バベルの塔の秘密 ~銭形姉妹への挑戦状 スタンダード・エディション
- 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
- 発売日: 2006/08/25
- メディア: DVD
↓古厩監督といえば
↓村上淳といえば、これを思い出します。