「36 HOURS」(1954) [映画(洋画)]
表題の作品は1954年のイギリス映画「36時間」である。1964年のアメリカ映画に同名タイトルの作品があるが、今回述べるのはそれよりも10年前のイギリス映画の方である。36時間という限られた時間の中で、自分に掛けられた殺人の罪を解明していくというサスペンス作品である。尚、本作は日本では劇場未公開である。
作品データを記しておくと、時間は84分、白黒作品である。監督はモンゴメリー・タリー、脚本はスティーヴ・フィッシャー、撮影はジミー・ハーヴェイである。そして出演は、ダン・デュリエ、エルシー・アルビーン、アン・ガドラン、エリック・ポールマン、ジョン・チャンドス、ケネス・グリフィス、ジェーン・カー、マイケル・ゴールデン、たちである。
アメリカ空軍のパイロット・ビルは36時間の休暇で、久しぶりにイギリスに戻り、妻の元へ行く。が、連絡が取れなくなっていた妻は引っ越していた。何とかして妻の行方を突き止めたビルだったが、彼が目にしたのは妻の死体だった。が、彼は妻殺しの容疑で追われることになってしまう。休暇として与えられた時間でビルは事件を追っていくことにしたが...
唐突な所もあるが、テンポ良く物語は進んで行く。そしてラストで真相が明らかになるが、意外な結末というのは、この種の作品では当たり前であるのだが、しっかりとやってくれます。
白黒映像が持つ特有の陰影が良い味になっていて、面白い所であり、演出の方もそれなりに面白い。ただ、36時間の間に事が起こり、解決してしまうというのは、ちょっと都合が良すぎるという気もするのですが...
↓ビデオであってDVDではありません。(かつてはLDでもリリースされていたのに、DVD化は無理なのかな???)
本作主演のダン・デュリエの他の出演作をいくつか
ウィンチェスター銃'73 (ユニバーサル・セレクション第4弾) 【初回生産限定】
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン
- メディア: DVD
「シベリア超特急」(その1) [映画(邦画)]
現在、懐かしの邦画ヒーローシリーズの第23弾として「渡り鳥」シリーズについて述べているが、映画評論家であり、BS-i・丹羽Pファミリーの一員でもある水野晴郎先生が亡くなったということで、「渡り鳥」を一旦止めて、追悼ということから、第24弾として「シベリア超特急」シリーズを先に述べることにします。
本シリーズは、水野先生が長年の夢だった監督に挑んだ作品であり、製作、監督、原作、脚本、主演、主題歌の作詞を務めた作品であり、シリーズ化されることになった作品である。水野先生にとったら、まさに映画人生の集大成といった作品である。が、内容の方はB級作品といったものであり、色々と指摘されている。が、これは映画に捧げた水野先生らしいところであり、逆にカルト的人気を得ている。
シリーズ作品を振り返ると、劇場作品と舞台公演があり、映画は5本、舞台が2作ある。また、シリーズ完結編となる新作映画の準備が進められていて、台本は完成している。弟子の西田和昭が意思を継いで映画として完成させたい、と語っているが、果たして劇場版として制作されるでしょうか?
映画は、シリーズ第1作「シベリア超特急」(1996年)、第2作「シベリア超特急2」(2000年)、第3作「シベリア超特急3」(2002年)、第4作「シベリア超特急5」(2004年)とあり、2003年に舞台上演された作品がビデオ化され、それをそのまま劇場公開した「シベリア超特急4」がある。尚、もう1つの舞台は「シベリア超特急00・7~モスクワより愛をこめて」である。
今回は、シリーズ第1作の「シベリア超特急」についてです。尚、本作には、劇場公開バージョンの他に、ビデオ・バージョン、アメリカ公開バージョンなども存在する。
作品データを記しておくと、1996年のウィズダム作品である。時間はバージョンによって差があり、80、82、84分である。製作は水野晴郎、プロデューサは安藤庄平と西田和晃、監督はMIKE MIZUNOという名前になっているが、言うまでもなく水野晴郎である。更に、原作、脚本も水野晴郎、撮影は安藤庄平、美術は徳田博、字幕は戸田奈津子、ナレーターは油井昌由樹である。そして出演は水野晴郎、かたせ梨乃、菊池孝典、アガタ・モレシャン、シェリー・スェニー、西田和晃、占野しげる、エリック・スコット・ピリウス、フランク・オコーナー、フィリップ・シルバースティン、たちである。
物語は、1938年、モスクワから満州へ向けて走るシベリア鉄道の列車には山下奉文陸軍大将たち3人の日本人各国の人たちの合わせて9人が乗っていた。まず、ソ連軍人のポロノスキーが毒殺され、2人が消えた。山下たちが犯人捜しに乗り出すが、続いてナチスのユンゲルスが殺害される。そして消えたはずの李蘭がヤマしたの前に現れた。彼女はスターリンによって山下暗殺のために送り込まれた刺客だった...
演出や演技については素人レベルの範疇であるのだが、そういうものを忘れさせてくれるものが本作にはたっぷりとある。それは本編に散りばめられた数々の名作映画へのオマージュである。水野先生の映画に対する愛の深さを感じられずにはいられない。で、出てくる名作のことを頭に浮かべて探し始めると、演出や演技についてはどうでも良くなる。更に、殺人のトリックを解いていくミステリー作品としての謎解きの面白さがあり、最後に待っている大どんでん返しが実に気持ちよく決まり、「ドンデンは映画の醍醐味」という所をたっぷりと楽しませてくれる。
商売道具として製作された映画には無い映画に対する愛情に満ちた作品であり、カルト映画として人気が出るのも当然でしょう。「いゃ~あ、映画って本当にいいものですねぇ」
最後に、再び記しておきます。「水野晴郎さんのご冥福を心からお祈りいたします」
ケータイ刑事銭形舞6話[裏ネタ編] [ケータイ刑事]
今回の裏ネタ編は第6話「闇の暗殺者! ~皆殺しの砦殺人事件」である。この物語は「ケータイ刑事」シリーズの中でも珍しく、ハードボイルド・タッチの作品である。ということで、今回は「ハードボイルド」についてと、今回のゲスト・キャラである袴田権四郎の通称の「モリアーティ」について、劇中に出てきた人名・亜蘭墨史(あらん・すみし)から「アラン・スミシー(ALAN SMITHEE)」について記すことにする。
尚、2年近く前になるが、MBSの再放送の時に記したこの物語の記事は「ここをクリック」してください。
「ハードボイルド」:英語で記すと「Hard Boiled」。文字通り「固ゆで卵」を意味している。が、そこから転じて、文学の世界で、感情を交えず、客観的な態度、文体で事実を描写する手法、文体のことを言うようになり、ミステリー作品の分野において、行動的でハードボイルドな性格の非情な探偵を主人公とした作品、作風を表す言葉になった。
小説の世界では1920年代に登場し、ダシール・ハメット、レイモンド・チャンドラーたちが代表的な作家である。また、映画の世界では、ハンフリー・ボガート主演、ハメット原作の「マルタの鷹」(1941年)のイメージが定着している。また、そのボガートの影響で、トレンチコートとソフト帽は「ハードボイルド」の世界では必要不可欠なものとなった。
「カサブランカ」「マルタの鷹」「三つ数えろ」はハードボイルド映画を見る場合、見ておかなければならない作品である。(ちなみに「三つ数えろ」やハードボイルド作品のパロディ映画「四つ数えろ」(1982年、スティーヴ・マーチン主演、カール・ライナー監督)も見ておいた方がよろしいかと...)日本映画の「用心棒」や松田優作主演の「探偵物語」、'70'sの「ダーティハリー」シリーズ(3まで)や「フレンチ・コネクション」あたりも見ておきたい作品である。
「モリアーティ」:コナン・ドイルの小説「シャーロック・ホームズ」シリーズに登場するキャラクターであり、ジェームズ・モリアーティ(JAMES MORIARTY)が本名である。21歳にして二項定理に関する数学論文を発表し、地方の大学で数学教授となる。が、同時に犯罪者としての才能も発揮して、ロンドンに暗躍する悪党の黒幕として君臨し、犯罪計画を手下に与えて自らはその計画には加わらなかった。
ホームズと同等の知能を持っているということで、ホームズもモリアーティには苦戦した。何度かの勝負があるが、いずれもホームズが勝利した。『最後の事件』ではホームズと共にスイスのライヘンバッハの滝に転落し死亡した。(ホームズも死んだはずだったが、復活を望む声によって、ホームズは生きていたことにされて復活、モリアーティの残党と対決していくことになる。)
コナン・ドイルが一切関係ない映画作品で、「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎」(1985年)において、少年時代のホームズとワトソンが対決したレイス教授が後に「モリアーティ」を名乗ったが、この作品自体は番外編であり、シャーロキアンの間では全く認められていない。
「アラン・スミシー(ALAN SMITHEE)」:人名であるが、これは特定の個人ではなく、アメリカ映画において、監督が何らかの理由で降板したり、監督が監督としての責任を嫌った場合に使われた偽名である。1968年から1999年の間に使われていた。
尚、この名前はカンタンに使えるものではなく、全米監督協会による審査、認定が必要であり、厳格な規定がある。また、この名前を使った監督は、自分の名前をクレジットに使うことを拒んだ理由を口外することを禁じられる。
最初にこの名前が使われたのは、1968年公開の「夏の日にさようなら」である。それから度々使われたが、いつしか映画マニアの間で、この名前はトラブルがあった時に使われる偽名だと言うことが知られるようになり、「偽名」という意味が薄くなってきた。そんな中、1997年に映画「アラン・スミシー・フィルム」が、「アラン・スミシー」を題材としたコメディ作品で暴露され、しかもこの作品でトラブルが起こり、本当に「アラン・スミシー」名義となったことで、マスコミが面白おかしく報道した。これによって全米監督協会はこの名前に偽名の意味がなくなったと判断して、使用を止めた。
尚、日本語では全く関係ないが、英語で記した「ALAN SMITHEE」をアナグラム変換(「ケー刑事・ファン」ならば説明の必要はないですよね。)すると「THE ALIAS MEN」となり、「偽名の人々」となるのは面白い所である。
↓ピックアップしておきます。
↓参考まで
- 作者: マイケル ハードウィック
- 出版社/メーカー: 原書房
- 発売日: 1995/08
- メディア: 単行本
詳注版 シャーロック・ホームズ全集〈7〉最後の事件・空き家の冒険 (ちくま文庫)
- 作者: W.S. ベアリング‐グールド
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 1997/10
- メディア: 文庫