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「無宿人御子神」(その1) [映画(邦画)]

懐かしの邦画ヒーローシリーズの第45弾として取り上げる作品は「無宿人御子神(むしゅくにん・みこがみ)」シリーズです。この作品は、「木枯らし紋次郎」の原作で知られている笹沢左保の原作を元にした時代劇アクションシリーズであって、東宝が制作した作品である。(テレビドラマとなった「木枯らし紋次郎」のヒットによって、笹沢作品を映像化しようとしたものである。)

主人公の無宿人御子神の丈吉は、元渡世人であったが、妻子のために足を洗っていた。が、妻子を国定忠次に殺されたことで、妻子の仇を取るために国定忠次を追って旅に出て、その旅先で起こった出来事を描くという展開の物語である。→連続TV時代劇の方が映画シリーズにするよりも向いているような物語でもある。

主演は原田芳雄であって、スタートしたのは1972年である。結局、1973年までに3本が製作されただけでシリーズに幕を下ろすこととなってしまった。「木枯らし紋次郎」は「股旅もの」というところが受けてヒットを記録したが、その再来というようなブームを呼ぶことは出来なかった。

日本映画全盛の昭和30年代であれば、シリーズ作品として大きく化けた可能性も考えられるが、既にTV時代となっていた'70's初頭の作品であったため、苦戦することになってしまったのは残念であった。しかし、内容的には時間の制約がより厳しくなるものの、1時間の連続TVドラマにしたほうが良かったと感じられる作品でもある。

また、ソフト化という点でも恵まれていないのだが、本シリーズの全3作はアメリカ版のDVDがリリースされているということで、思いも掛けないところ存在している。そのため、カルト的なシリーズとしても知られている作品でもある。

今回は初回ということで、各シリーズ作品のおさらいということで、各シリーズ作品のタイトルを記しておく。
シリーズ第1作「無宿人御子神の丈吉 牙は引き裂いた」(1972年)、シリーズ第2作「無宿人御子神の丈吉 川風に過去は流れた」(1972年)、シリーズ第3作「無宿人御子神の丈吉 黄昏に閃光が飛んだ」(1973年)。

次回からは、年代順に、それぞれの作品について記していくことにします。

 

↓原作小説

無宿人 御子神の丈吉〈1〉 (徳間文庫)

  • 作者: 笹沢 左保
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1987/10
  • メディア: 文庫

無宿人 御子神(みこがみ)の丈吉〈2〉 (徳間文庫)

  • 作者: 笹沢 左保
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1987/11
  • メディア: 文庫

無宿人 御子神の丈吉〈3〉 (徳間文庫)

  • 作者: 笹沢 左保
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1987/12
  • メディア: 文庫

無宿人 御子神の丈吉〈4〉 (徳間文庫)

  • 作者: 笹沢 左保
  • 出版社/メーカー: 徳間書店
  • 発売日: 1988/01
  • メディア: 文庫
↓US版のDVDはこちら

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GLASS TIGER『THIN RED LINE』 [音楽(洋楽)]

表題のアルバムは1986年に発表された彼らのデビュー・アルバムである。カナダ出身のロック・バンドである彼らの結成は1983年であるが、レコードデビューとなったのが1986年ということで、本アルバムは彼らのデビュー・アルバムである。また、本国カナダでは1位を獲得し、全米シングル・チャートでも2位まで上昇したヒット曲『Don't Forget Me (When I'm Gone)』をフューチャーしたアルバムでもある。尚、本アルバムのチャート成績はBillboardで最高位27位を記録していて、1987年の年間アルバム・チャートでは55位にランクインしていることから、デビュー・アルバムと言うことでは成功したと言うことが出来る。

収録曲は以下の全11曲である。『Thin Red Line』『Don't Forget Me (When I'm Gone)』『Closer To You』『Vanishing Tribe』『Looking At A Picture』『The Secret』『Ancient Evenings』『Ecstacy』『Someday』『I Will Be There』『You're What I Look For』。

この中からシングル・カットされたのは全部で5曲になる。デビュー・シングルである『Don't Forget Me (When I'm Gone)』がカナダで1位、アメリカで2位を記録し、1986年のBillboard年間シングル・チャートでも34位にランクインしている。また、イギリスでも最高位29位を記録した。続く2nd.シングルの『Thin Red Line』はカナダで最高位19位に留まったが、『Someday』はカナダで最高位14位だったが、アメリカではBillboardで最高位7位を記録して1987年のBillboard年間シングル・チャートでは69位にランクインし、イギリスでも最高位66位を記録している。その後のシングルとなった『You're What I Look For』はカナダで11位、そして『I Will Be There』はカナダでは最高位29位、アメリカでは最高位34位を記録している。

お薦め曲は、彼らの最大のヒット曲である『Don't Forget Me (When I'm Gone)』と大ヒットとなった『Someday』のシングル2曲と、シングル曲であり、かつアルバム・タイトル・ナンバーでもある『Thin Red Line』、そして『Closer To You』をピックアップしておく。

彼らはBRYAN ADAMSのバックバンドをしていたメンバーが集まって結成されたバンドである。そのため、バンドマンとしての実力の方もしっかりとしたものを持っている。で、BOZ SCAGGSのバックバンドだったメンバーが集まって結成され、大ヒット曲を次々と生み出したTOTOを思い出させてくれるところでもある。そんな彼らが'80'sのアメリカン・ロックの王道を行くサウンドを聴かせてくれているということで、安心して聴いていることが出来るアルバムとなっている。また、捨て曲もなく、各楽曲のクオリティも高いため、アルバムとしても完成度の高いものであり、ミュージシャンとしてのキャリアが出ているところでもある。

ということで、'80'sのアメリカン・ロックの王道を行くアルバムであるだけに、じっくりと聴いておきたい所である。ただ、1988年に発表される2nd.アルバムは、本作が良かっただけに期待外れになってしまい、残念なことななるだけに、本アルバムの価値はより高くなる。'80'sサウンドがお好きな方であれば、チェックしておくべきアルバムである。

 

Thin Red Line

Thin Red Line

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Emd Int'l
  • 発売日: 2000/01/25
  • メディア: CD


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ケータイ刑事銭形雷11話[裏ネタ編]PART 4 [ケータイ刑事]

銭形雷」の第11話「虹は知っていた! ~写真家アシスタント殺人事件」の「裏ネタ編・増補」の3回目となる今回は、レインボー万作がこれを付けていたことから「ターバン」について、虹を撮影することがこれだと言っていたことから「ライフワーク」について、そしてこれの疑惑があったことから「盗作」について記します。尚、「ライフワーク」については「・1話[裏ネタ編]PART 5」で、「盗作」については「・17話(2nd.4話)[裏ネタ編]PART 6」で記したものをベースにして加筆しました。

尚、BS-iの本放送時に記した記事は2006/3/13付けで、MBSでの放送時に記した[改訂版]は「ここをクリック」(ここにはBS-i本放送時に記した記事へのリンクもあります。)してご覧下さい。

ターバン」:イスラム教徒、シーク教徒、中近東諸国やインドの男性が頭に巻く帯状の長い布のことである。これは、身分、階級、宗派、部族などによって巻き方が決まっているものであって、ファッションではない。特にイスラム教徒の間では宗教的敬虔さの象徴でもある。

イメージとしては「白い布」というのがあるが、身分や階級を表しているため、他の色の布も用いられると同時に、柄のある布も用いられる。(単色ではなく、鮮やかな色と柄の布というものも一部にはある。)尚、ターバンとして使用される布の長さに関しては、特に何mという規定はない。(シーク教徒が使用する大人用のシークターバンは長さ8m、幅1mというのが標準的らしい。)頭を1、2回巻くものはそれほど長くないが、6回巻きが標準となっている宗派ではそれだけ長いものが必要になるのは言うまでもない。→「雷・1st.18話」では長いことをネタにして遊んでいましたね...

また、イスラム圏では、ターキーヤと呼ばれる頭にピッタリとした丸帽を先に被り、その上から長い布(ターバン)を巻くのが一般的であるのだが、このスタイルを真似た女性用の帽子(見た目にはターバンに見える)のこともターバンと呼ぶ。(よって、女性用のターバンも存在していることになる。)また、女性用だけでなく、男性用の帽子もある。

役割としては、機能的には帽子としての役割であるが、発汗の抑止、頭部の暑さや寒さの抑止、砂漠での砂よけという役割もある。それに加えて、宗教的には身分や地位階級を表していて、装身具と身分証の双方の役割を果たしている。(身分を表すという意味では、冠の役割を果たしていると言うことになる。)しかし、現在では、イスラム教徒やシーク教徒という宗教信者、または特定民族の間では積極的に用いられているが、大衆の間では日常的に使われるものという地位からは後退しているが、この様子は、大正から昭和初期にかけての日本での着物(和服)のポジションに似ているということにもなる。(ちょっと乱暴な言い方ですが...)

ちなみに、日本では「ターバン」と言うと「インド人」のイメージが「イスラム教徒」「中近東の人」というイメージよりも上回っていて、インドの街中ではターバンをしている人が多数というようなイメージがあるが、実際にはインド人はヒンドゥー教徒の方が多く、ヒンドゥー教徒はターバンを用いることはないので、インド国内(特に都市部ょではその割りにターバン姿の人を目にするのは少ない。(インドよりも、中近東、特にアラブのイスラム諸国の方がターバン姿の人が多い。)

英語、ドイツ語、フランス語では「Turban」、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語では「Turbante」、オランダ語では「Tulband」、トルコ語では「Türban」と言って、世界的に統一されてはいないのだが、言語の違いによる名称の差がその割りに少ない。

ライフワーク」:一生を掛けてする仕事のことを言う。特に、学者が研究に対して打ち込んだり、芸術家や音楽家などが人生を捧げたような一大芸術作品を作ることに打ち込む場合について呼ばれることが多い。命を賭けてまでやり遂げようという強い意志が見られるため、一流の芸術作品に於いては作者の気迫などがありありつ表現されているものが多い。歴史に名を残している芸術作品の大半はそういう作品である。尚、英語では「Lifework」と言う。

「ケータイ刑事」に於いては、スタッフが「ケータイ刑事はライフワーク」と発言している人が多いのだが、脚本家の渡邉睦月さんもそういう一人であるのだが、「」と「」では脚本を1本も書いていないのはどうしてなのでしょうか?→「ライフワーク」と言うからには、金銭的なことは度外視して「やらせてくれ」と言うべきであるだけに...

また、劇中でも「ケータイ刑事」では「ライフワーク」という言葉を口にする人が多いという傾向がある。特に宝積さん演じるクイーンは、新しい作品になればなるほどその傾向が強い。が、「ライフワーク」という言葉が出るのと反比例して、単に「クイーン」という肩書きに拘っているだけの小物というイメージが強くなっているのもまた事実でして...

盗作」:「剽窃(ひょうせつ)」とも言うこともある。(論文などでは「盗作」と言うよりも「剽窃」と言う方が多く、芸術作品などでは「剽窃」と言うよりも「盗作」と言うことの方が多い。)他人の著作物の全部、またはその一部分のアイデアや表現方法などを、その権利者に無断で使って自分が生み出したものとして新たな著作物を生み出す行為のこと、若しくはそのようにして生み出された作品そのもののことを言う。→著作権侵害行為となり、これは犯罪行為である。(特に、ネット時代になってからは、「著作権侵害」という犯罪行為は急増している。但し、その殆どが立件されない(現行法では、著作権侵害を立件するというのも結構難しいことでもあって...)というのが現状である。)

尚、よく誤解されるのだが、「パロディ」や「オマージュ」は「盗作(剽窃)」ではない。「パロディ」は先人の生んだ芸術作品などを揶揄したり、風刺したり、批判したりする目的があって滑稽化して模倣したものであり、「オマージュ」とは先人の作品に影響を受けたことから尊敬の気持ちがあって、敬意を示して行われるものである。ということで、盗作逃れのために「パロディだ」、「オマージュだ」と言う言い訳を耳にすることがあるが、そういう輩に限って「パロディ」や「オマージュ」の意味を知らないものである。(単に言葉逃れの言い訳をしているだけであって、「パロディ」や「オマージュ」になっていないものが山のようにある。)要するに、「滑稽化されていないパロディ」、表面だけ真似た「敬意のないオマージュ」などがあるということで、これらは単なる「パクリ」でしかなく、歴とした「盗作」であると断言できるものである。

とは言っても、「盗作」かどうかを判断するのは、最終的には裁判で決着を付けることになる。(裁判にならない限りは「盗作」というものは存在せず、全て「盗作疑惑」ということになり、この時点では「白でもなければ黒でも無い。)尚、裁判で「盗作」を立証するには、当然のことながら客観的な証拠が必要であって、なかなか難しいことでもある。(この辺りは、更なる法改正も必要であろうが、余りにも緩くしてしまうと、「オマージュ」までも「盗作」と判断されてしまう可能性が高くなってしまうこともあって、難しいところである。)

 

ケータイ刑事 銭形雷 DVD-BOX 1

ケータイ刑事 銭形雷 DVD-BOX 1

  • 出版社/メーカー: ハピネット・ピクチャーズ
  • メディア: DVD

チェチェン大戦争の真実―イスラムのターバンと剣

チェチェン大戦争の真実―イスラムのターバンと剣

  • 作者: 植田 樹
  • 出版社/メーカー: 日新報道
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 単行本
フェルメール 青いターバンの少女 6号 額 A ゴールド

フェルメール 青いターバンの少女 6号 額 A ゴールド

  • 出版社/メーカー: プリハード株式会社
  • メディア:
DX ターバン ピンク

DX ターバン ピンク

  • 出版社/メーカー: アイコ
  • メディア: おもちゃ&ホビー
雑貨 怪しいインド人胸像【赤ターバン】

雑貨 怪しいインド人胸像【赤ターバン】

  • 出版社/メーカー: tirakita
  • メディア: おもちゃ&ホビー
「ライフワーク」で豊かに生きる (サンマーク文庫)

「ライフワーク」で豊かに生きる (サンマーク文庫)

  • 作者: 本田 健
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2006/09/16
  • メディア: 文庫
人生設計・ライフワークの原理・原則―人生は自分でつくりあげる (原理原則シリーズ)

人生設計・ライフワークの原理・原則―人生は自分でつくりあげる (原理原則シリーズ)

  • 作者: 井上 富雄
  • 出版社/メーカー: 総合法令
  • 発売日: 1994/05
  • メディア: 単行本
盗作の文学史

盗作の文学史

  • 作者: 栗原裕一郎
  • 出版社/メーカー: 新曜社
  • 発売日: 2008/07/01
  • メディア: 単行本
パクリ・盗作 スキャンダル事件史 (宝島SUGOI文庫 A へ 1-83)

パクリ・盗作 スキャンダル事件史 (宝島SUGOI文庫 A へ 1-83)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 宝島社
  • 発売日: 2008/12/18
  • メディア: 文庫
現代日本文学「盗作疑惑」の研究―「禁断の木の実」を食べた文豪たち

現代日本文学「盗作疑惑」の研究―「禁断の木の実」を食べた文豪たち

  • 作者: 竹山 哲
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2002/04
  • メディア: 単行本

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名曲探偵アマデウス#74 ワーグナー「トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死」 [ドラマ]

今月最後の新作となった今回は、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死」ということで、前回に続いてまたもオペラの曲が取り上げられました。ただ、前回とは全く違う構成としていて、オペラの物語についてはより簡単にということになっていて、曲の説明が中心になっていました。→全3幕のオペラは約4時間に達する大作であり、中世イギリスの歴史などの予備知識も必要となるだけに、この説明だけでも随分と時間を取ってしまうので、出来るだけ簡単にということですね。

尚、次の新作まで、間に3週あるということから来るサービスとしては、黒川芽以さんのカノンさん以外の姿の登場ということと、シブガキ隊の『NAI・NAI 16』を使ったということですかね。そのため、難しく感じられる「トリスタンとイゾルデ」の(オペラ)の物語を優しくしていたように感じました。

冒頭、ラジオの修理をしているカノンさんだったが、「新しいの、買って下さいよ」と言うが「ラジオぐらい直せないと一人で生きていけないぞ」と言う所長。これに「何で一人で生きて行かなきゃなんないんですか?」と言ってスイッチを壊してしまったカノンさん。その表情の変化が楽しい所です。(が、昔のラジオだったら、それぐらいでは壊れたとは言えず、ちゃんと動作するものです。)

そんな所に「失礼します」と言って依頼人がやってきた。「いらっしゃい」と直ぐに対応するカノンさんの変化は、やはり客商売ということを分かっていますね。が、「あなたも取れちゃったの?」と言うカノンさん。というのは依頼人は手に車のハンドルを持っていたためだった。で、「これはマイ・ハンドルです」と言って、運転感覚を保つために持ち歩いている、自分はドライバーだ、と言った。するとカノンさんは手にしていたドライバー(ねじ回し)に目をやって笑顔で「ラジオ、直せます?」これに「そっちのドライバーじゃないんですよね、当然ながら...」と、ベタなコントで楽しませてくれました。(この後に、カラスの鳴き声が入ったらもっと面白かったのですが...)

依頼人に事情を聴く所長。依頼人はある大企業の創業者一族の屋敷で長年専属運転手をしていた。(元々はタクシー運転手(所長もこれをやっていましたね。)だったが、たまたま乗った社長が運転を気に入ってスカウトされ、かれこれ20年になるということだった。)安全運転第一で務めてきたが、最近、自分の運転がおかしくなってきた。(突然、アクセルをベタ踏みしたくなったり、急ハンドルを切ってみたくなったりする。)それは先日、社長夫人を乗せて買い物に出掛けた夜のことで、雨の夜。大渋滞の車内でのことで、ラジオからその曲が流れてきた。(黒川さんが若い社長夫人というセレブになっていて、カノンさんとは随分と違う姿を魅せてくれました。)カノンさんが「その曲の題名は?」と尋ねるが「何とかとなんとか、と言っていた気がします」と答える。「そんなんじゃ分かりませんよ」と言うカノンさんだったが、スイッチが入った所長は立ち上がり、「もしかして、それは…」と言って「トリスタンとイゾルデ」と口にした。「それです」ということで、所長は依頼を受けた。

所長は「歌はありましたか?」と尋ね、「ない」という返事を受けると「第1幕への前奏曲、でしょう」と言って、曲を絞り込んだ。で、この曲はオープニングテーマのようなものです、と説明したが、実に分かりやすい説明でした。

で、「最初から聴いてみましょう」ということで、いつものように曲に突入していく。で、いつものように表情豊かなカノンさんの反応があって、まずは「トリスタン和音」についての説明へ。主和音がないというこの独特の和音が不思議な世界を構築していくが、時代背景を含めて実に画期的だったことがよく分かりました。

で、「無意識の思い」と言うことを口にした所長。カノンさんは「何なんです?安善(あんぜん)さん(=依頼人)の無意識の思いって?」と尋ねるが、「無意識って、自分で意識できないから無意識って言う訳で...何だってと言われも何だろう」と返され「そりゃそうだ」と一人納得する楽しいカノンさんでした。

続いては「ライトモチーフ」についての説明へ。ワーグナーが生み出したものであるこの説明が、人の気持ちを表しているという説明に留まらず、「トリスタンとイゾルデ」の物語の骨組みが語られる。(4時間のオペラの物語を簡単に説明するには、こういうことにならざるを得ないでしょうが...)更に、語られるライトモチーフについては、オペラでのシーンを含めての説明がある。そして、依頼人は社長夫人と恋に落ちたのではと言う展開から、所長が「それは100%、恋かも」と言うと、『NAI・NAI 16』が流れる。すかさず「古っ」とカノンさん。こういう所の反応は実に早かったですね。

カノンさんは「音楽を聴くだけでそんなに変わっちゃうことってあるのかなぁ?」と漏らすが、所長が「媚薬だよ」と、カノンさんに負けずに素早く口にしていた。(やっぱり、良いコンビですね。)で、物語に登場する「媚薬」についての説明で、ワーグナーが音楽的な媚薬を仕込んでいるという説明へ。

依頼人は全ては音楽に惑わされたせい、気の迷いだ、と判断し、理性を取り戻せるとして、結論を出し、お礼を言って帰ろうとする。カノンさんが「奥さんとはどうするんですか?」と尋ねるが「何もございませんから」と依頼人。しかし所長は「本当にそうですか?」と言って、この曲を聴く前から奥様を愛していたのでは?と問う。否定する依頼人だったが、所長は「トリスタンとイゾルデ」の物語は中世から伝承されてきた物語であるがワーグナーが改編している、ということの説明へ。

ここでは「トリスタンとイゾルデ」の物語での愛と、ワーグナーが改変した愛、そしてワーグナーの愛についてを重ねて説明される。ワーグナーの愛は今風に言うと不倫の愛であって叶わなかったが、これって、「経験者は語る」「体験者ならでは」ということでもあって、それと願望を含めた心の内面が重ね合わされているって、スゴイですね。ただ、こういう書き方は、現在でも当たり前と考えられているが、その手法というのは昔から、更には色んな世界であったということですね。

依頼人は、奥様の社長との結婚は本意ではなかった、と語り、その説明をする。奥様の父親の会社の救済の見返りとして結婚を望まれ、恋人がいたが父に土下座までされて仕方なく結婚を受けたのだった。(この展開って、昼ドラでは当たり前に出てくる筋書きですね...)そして、奥様の不機嫌な横顔を見ていて、あの日の夜、見つめ合った目の中に深い哀しみを見てしまった。で、以前から奥様のことを愛しく思う気持ちがあったのかも知れない、と所長の言葉を認めた。が、手にしているハンドルを強く握って「しかし、一体私に何が出来ると言うんですか?」と言った。するとカノンさんがハンドルを奪い取り「こうなったら、アクセル全開!駆け落ちするしかないでしょ~う!!」と言ってハンドルを左右に切った。(このカノンさんのノリはいつものとおりですね。)が依頼人は急ブレーキを踏み「私は社長を裏切ることは出来ません」と言った。(急ブレーキでカノンさんは前につんのめるという所は芸が細かい...)

依頼人は「トリスタンとイゾルデ」の物語の結末を所長に問う。所長は「二人とも命を落とします」と言うと「そんなぁ」とカノンさんの反応と、「心中しろとでも言うんですか?」というオーバーな依頼人のリアクションが面白い所でした。所長は「ワーグナーがこの音楽で成し遂げた底に快傑のヒントがあるはずです」と冷静に答え、「トリスタンとイゾルデ」の物語の終幕部分への説明へ。

ここでは「救い」があるということで、それについての説明へ。ワーグナーは2人の魂の救済を音楽で表現し、それをこれまで使われなかった主和音を登場させることで表現した。ここで興味深いのは、ワーグナーは総合芸術を目指していたということで、だからこそ映画監督などに通じていると説明されている所ですね。「20世紀の扉を開いた」と言う言葉が印象に残りました。

所長は依頼人に「あなたはどういう選択をしますか?」と尋ねた。依頼人は少しだけ考えて「社長にお暇を頂こうと思います」と答えた。カノンさんは「じゃあ、駆け落ちするんですね」と尋ねるが、間髪入れずに「いえ」と依頼人。そして「奥様とはもう会いません」と言った。カノンさんは「それでいいの?」と尋ねるが、依頼人は、あの時愛を躱したが、それは魔法の中の出来事で、その余韻に浸っていたのだ、と言って、吹っ切れた様子だった。所長が「これからどうするのですか?」と問う。するとハンドルを握りしめて「私にはこれしか、いや、これがありますから、何とかやってみます」と答えた。で、頭を下げて帰って行った。

今回は、ドラマ部分は約36分半強、曲が6分半強、ラストのオチの所が40秒弱という構成であって、ドラマ部分がやや長く、オチを短くなっていました。尚、曲の所は、全編では4時間近い長大な作品であるので、紹介された部分(3ヶ所)のダイジェスト的な構成でした。(当然と言えば当然ですが...)

ラストのオチは、カノンさんはラジオの修理をしていたが上手く行かない。で、「こうなったら」と言ってラジオにチョップを入れた。(叩けば直るという考えがあるのですね、流石はカノンさんです。)するとラジオから声が流れてきた。それは依頼人がトラック野郎になっていて、「野菜から精密機械まで、確かな運転で運ばせて頂きます。夜露四苦!」という無線の声だった。カノンさんは軽くラジオを叩くと、その声は聞こえなくなり、『NAI・NAI 16』が流れてくる。で「何だ、混線か...」と漏らしたカノンさん。所長はイビキをかいて寝ていた。

カノンさんがいじっていたラジオであるが、以前の物語にも登場してたものですね。その時も同じようなことがあっただけに、かなり草臥れているようですね。そんなかなり年代物のラジオに対して、叩いて直そうという考えがあるというカノンさんの考えといい、叩いて直るというところは完全に昭和のテイストでした。(最新の機器の中には、叩いたら壊れてしまうようなものもあるぐらいだから、どっちが良いのか?と考えてしまうことにもなる。)ということで、今回は昭和のテイストというのがスパイスになっていて、楽しい所でした。

また、カノンさんも何だかんだで修理して使おうとしているということで、人に頼もうとしている所はあるものの、物を大切にするという所は良いところです。

オチに関しては、タクシー運転手に戻ったと予想したが、トラック野郎というのはやってくれました。これって、カノンさんのハイテンションに影響されたということですかね。しかし、ここもやはり昭和のイメージのものなんですよね。

それを思うと、全体的に昭和テイストの物語であったが、唯一、社長夫人が携帯電話を手にしていて、これだけが昭和ではないものとなっていて、昭和風のテイストのものとのミスマッチが何とも言えない独特の雰囲気を醸し出していたのが面白い所でした。また、シブガキ隊の『NAI・NAI 16』も昭和風の曲であり、所長の言葉を代弁しているようで、音楽が説明しているという今回の曲の説明にも合わせた上手い所でした。
黒川芽以さんのセレブ姿については、社長夫人には見えない(社長令嬢にも見えない。)のだが、父の会社の救済のための政略結婚で嫁いだ若奥さんというのだったらば、十分納得できました。その社長夫人と、テンションの高いカノンさんとのギャップで魅せていたというのが、3週間間があるというお休みに対する視聴者サービスだと解釈しておきます。

来週(9/27)は、ファイルNo.070のムソルグスキー「交響詩『はげ山の一夜』」の再放送です。その後も同様で、3週間が空き、次の新作となるファイルNo.075のショパン「ピアノ協奏曲第2番」は10/18までオアズケです。また、10/25のファイルNo.076もショパンで、「舟歌」の登場ですが、ショパンが2曲続くことで、取り上げられた曲でショパンが、ベートベンとシャーベルトを一気に抜き去って、単独1位になります。今年はショパンの生誕200年という年でもあるだけに、秋に再びショパン特集ということですね。(こうなると、地上波で再びショパン特集の集中放送をやるかのも...?)

 

ワーグナー : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲

ワーグナー : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲

  • アーティスト: ワーグナー,クライバー(カルロス),ドレスデン国立管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 2000/03/01
  • メディア: CD

ワーグナー : 楽劇<トリスタンとイゾルデ> (全曲)

ワーグナー : 楽劇<トリスタンとイゾルデ> (全曲)

  • アーティスト: ワーグナー,ベーム(カール),ピッツ(ヴィルヘルム),バイロイト祝祭劇場管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1998/05/13
  • メディア: CD

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」

  • アーティスト: ワーグナー,クライバー(カルロス),ドレスデン国立管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1994/02/02
  • メディア: CD

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲(フラグスタート/フルトヴェングラー)(1952)

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲(フラグスタート/フルトヴェングラー)(1952)

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2004/06/01
  • メディア: CD

ワーグナー:トリスタンとイゾルデ

ワーグナー:トリスタンとイゾルデ

  • アーティスト: ワーグナー,カルロス・クライバー,シュトゥットガルト国立歌劇場管弦楽団,Catarina Ligendza,Wolfgang Windgassen,Grace Hoffman,Gustav Neidlinger,Gottlob Frick
  • 出版社/メーカー: GOLDEN MELODRAM
  • 発売日: 2007/07/27
  • メディア: CD

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (3CD) [Import]

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (3CD) [Import]

  • アーティスト: ワーグナー,ヘルベルト・フォン・カラヤン,バイロイト祝祭管弦楽団,合唱団,ラモン・ヴィナイ(トリスタン),マルタ・メードル(イゾルデ),ハンス・ホッター(クルヴェナール),イーラ・マラニウク(ブランゲーネ),ルートヴィヒ・ウェーバー(マルケ王),ヘルマン・ウーデ(メロート)
  • 出版社/メーカー: ORFEO
  • 発売日: 2003/10/16
  • メディア: CD

↓オペラはこちら

楽劇《トリスタンとイゾルデ》全曲 [DVD]

楽劇《トリスタンとイゾルデ》全曲 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • メディア: DVD

ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》 [DVD]

ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • メディア: DVD

↓これはオペラではなくて映画です。

トリスタンとイゾルデ [DVD]

トリスタンとイゾルデ [DVD]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: DVD

トリスタンとイゾルデ [Blu-ray]

トリスタンとイゾルデ [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • メディア: Blu-ray

 


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