DARYL HALL + JOHN OATES『H2O』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1982に発表されたアルバムであり、彼らとしては13枚目、セルフ・プロデュース・アルバムとしては3枚目のアルバムである。このアルバムは翌1983年のBillboard年間アルバムチャートで堂々4位に輝いている。(1983年には優秀なアルバムがたくさんあり、上位に入るのは他の年以上に至難の業である。)
本アルバムでは飛び抜けたような存在の曲はないが、内容の高い曲が詰まっていて、ある意味では彼らの最高傑作アルバムと言っても過言ではない質の高さがある。そしてそのソウルフルなサウンドは今聴いてもその輝きを失っていないのである。
まずはヒット曲『Maneater』から始まるが、間奏の所に入っているブラスの音がスケールの大きさを感じることになる。そこからはソウルフルなナンバーで続き『Crime Pays』はモータウン・サウンドの香りが漂い、『Art Of Heartbreak』では、ミディアム・テンポの曲にサックスの音がスケール感を大きくしてくれる。ヒット曲『One On One』はスローテンポながらもソウルフルな暖かみあるボーカルが心に響く佳作である。
本アルバムが高く評価されるのはここからであり、『Open All Night』のようなスロー・バラードでこそ彼らの魂の叫びを感じることになり、MIKE OLDFIELDのヒット曲のカバーである『Family Man』がソウルフルなポップなナンバーとして甦っているのは感涙ものである。(この曲はシングル・カットされてヒットを記録している。)
更には、本アルバムの中では最もポップなナンバーである『Italian Girls』、彼らのこれまでのサウンドの延長線上にある『Guessing Games』というように、これまでの彼らのサウンドの延長線上にある曲も、魂を持って収録されている。また、『Delayed Reaction』はロックの血筋が入っていて、彼らがアメリカン・ロックの雄であることを忘れさせないでいる。
アルバムのラストに向かっては、再びモータウン・サウンドの香りが漂うソウルフルなボーカルが魅力な『At Tension』から『Go Solo』へと、豊かな表現力のある魂のこもったボーカルで締めくくってくれる。確かに、これまでに彼らが発表したヒット・アルバムと比べると地味と言われるかも知れないが、間違いなく一段も二段も上の良質のナンバーが集まっている。(だからこそ、秀作揃いの'83年の年間アルバムチャートでも、上位に食い込むことが出来たと言ってよい。)
この後もそれなりの質の高いアルバムを発表している彼らであるが、音楽的にも最も脂が乗っていて、音楽シーンのピークとなる1983年に歩調が合っているというのは偶然なのだろうか?
↓筆者が所有しているのは、「RCA」のロゴが入っている、このUS盤である。
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