BETTE MIDLER『THE ROSE』(SOUNDTRACK) [音楽(サントラ)]
表題のアルバムは1979年に発表されたものであり、映画「ローズ」（マーク・ライデル監督、ベット・ミドラー主演。ジャニス・ジョプリンをモデルにした(あくまでも架空の)ロック・スターの人生を描いた物語。）のサントラ盤でもある。主演と歌の両方で彼女は華々しい活躍を見せた。ということで、本アルバムはロックの魂が込められた一枚でもある。また、本アルバムの収録曲は全てがライブ収録となっていて、ライブ盤という性格も持ち合わせているアルバムでもある。
まずはテンポの良い『Whose Side Are You On』で、力強い彼女のボーカルが堪能できる。曲はライブ収録であり、迫力満点である。続く『Midnight In Memphis』はパワフルなサウンドが圧倒する一曲である。
続く『Concert Monologue』は、形こそ曲の様になっているが、これはライブで観客に向かっての話である。つまり、楽曲としてではなく、ライブとしては必ずある部分である。まあ、本アルバムはサントラ盤という性格があるから、こういうものがある方が盛り上がるので、歓迎するものである。続く『When A Man Loves A Woman』はスタンダード・ナンバーであり、数多くのアーティストたちも取り上げている名曲である。ここでの彼女は、ゆっくりと、一語一語を確かめるように、パワフルでかつハートフルに歌っている。その迫力は満点である。（本アルバムの前半では聴き所の一曲である。）続く『Sold My Soul To Rock 'n' Roll』はテンポの良いパワフルなロック・チューンである。ミドラーのボーカルも乗っていてナイスな一曲となっている。続く『Keep On Rockin'』もテンポの良いロック・ナンバーで、パワフルな一曲である。会場の方の興奮の度合いも高まり、実に気持ちの良い1トラックでもある。（LP時代のアルバムであるので、ここで一旦フェード・アウトとなる。）
後半の最初となる『Love Me With A Feeling』はややスローなテンポのロック・ボーカル・チューンで、場末の酒場ならば何処でも耳にすることの出来そうなブルース系のエッセンスに満ちた一曲である。ここでもミドラーのパワフルなボーカルが冴えている。続く『Camellia』はブラスのサウンドに圧倒されるテンポの良いロック・インスト・ナンバーである。続く『Homecoming Monologue』はトラック3と同様にライブにおける観客に対する話である。（ここにもこれがあるというのは、やはりLPでA/B面それぞれにおけるちょっとした演出とすれば、粋なはからいである。(こういうのはライブ盤では、曲の頭、またはおしりに含めてしまうことが多いので、独立しているというのはかえって新鮮でもある。)）続く『Stay With Me』はスローなバラード・ナンバーで、じっくりとパワフルに熱唱するミドラーが熱い。（どこかにジャニスの姿を思い出させてくれる。）続く『Let Me Call You Sweetheart』は語りであり、ラストを飾る名曲『The Rose』に向かって興奮が高まるブリッジとしてナイスなトラックである。で、ラストはピアノのイントロからゆっくりとかみしめるように歌うミドラーのボーカルが秀逸なバラードの『The Rose』となる。この曲はシングル・カットされ、大ヒットを記録している。（Billboardのレギュラー・チャートでは最高位3位、1980年の年間シングル・チャートでも堂々の10位に輝いた。）今までのテンポの良いロック・ナンバーを余韻を残す形で旨く締めてくれている。
'70'sには伝説となっているアーティストたちが何人かいるが、映画「ローズ」でモデルとなったジャニス・ジョプリンもそんな中の一人である。ジャニスのアルバムについてはまた別の機会とするが、'70'sの伝説の（音楽）スターにはどうしても「薬」という暗い影がまとわりついている。'60's後半になると泥沼となったベトナム戦争の暗い影が迫り、そこから逃れようとする若者たちが'70's前半に「ヒッピー文化」として新たなムーブメントを確立させるが、ジャニスはそんな世代の象徴となる存在でもある。ジャニスとミドラーを同一ラインで述べることは出来ないが、ジャニスを彷彿させるミドラーの検討ぶりは賞賛できるものである。'70'sの熱い魂に触れるにはあまりにもおあつらえ向きの一枚である。（ジャニスの曲に触れること、または映画「ローズ」の方も鑑賞しましょう。）
- アーティスト: Bette Midler
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