PINK FLOYD『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』 [音楽(洋楽)]
「銭形泪」(最終回)という偉大な芸術作品の間に挟まれることになるため、当然のように人類の文化遺産であるP. FLOYDのアルバムをもう一枚続けることにする。
表題のアルバムは1987年に発表されたギルモアを中心とした新生フロイドの4年ぶりのアルバムである。'80'sも後半に入ると、「既に絶滅した」とも言われたプログレであるが、「プログレは死んではいない」というギルモアの魂が作り上げたと言っていいアルバムである。(ロジャーの名前がないということで、完全にギルモア主導のアルバムであり、彼のソロアルバムに他のメンバーと豪華ミュージシャンが集ったと言ってもおかしくない。が、「PINK FLOYD」の名前を使うのにふさわしい内容に仕上げられている。)本アルバムはそのP. FLOYDの名前もあり、セールスは好調であり、本アルバムは1988年のBillboard年間アルバム・チャートでは25位、レギュラー・チャートでは最高位3位を記録した。(それでも、かつてのFLOYDを考えたら、その規模はまだまだ小さい小さい...)
サウンドの方は、幻想的な所はかつての姿が健在で、テーマを設定しているところもかつての通りで、「現代社会」をテーマにしたスケールの大きなフロイド節を聴かせてくれる。お家騒動でゴタゴタしていただけに、大いに待たされたが、期待に応えるアルバムに仕上がっている。
収録されているのは以下の全10曲である。『Signs Of Life [Instrumental]』『Learning To Fly』『Dogs Of War』『One Slip』『On The Turning Away』『Yet Another Movie/Round And Around』『New Machine, Part. 1』『Terminal Frost』『New Machine, Part. 2』『Sorrow』。
やはりFLOYDらしく、アルバム全体で一つの作品になっているだけに、お薦め曲というのは記さない。(というのは、何かをピックアップすれば、それは、例えば「カレーライス」の中で、具である肉、じゃがいも、にんじん、…等の何かがお薦めと言っていることになり、「カレーライス」全体を捉えていないことになるためである。)全体を一つの作品としてじっくりと鑑賞するのが彼らのアルバムなのである。
一応、本アルバムに触れることにするが、インスト・ナンバーである『Signs Of Life』で幕が上がると、いきなり彼らの世界に引き込むというのは流石である。で、ここから50分ちょっとの幻想的なドラマが始まる。メリハリもあり、主張もあって、聴き入っていると物語はドンドン進んでいき、終幕となる『Sorrow』は、メロディがとても綺麗で、余韻を持たせて幕が下りることになる。(このような進行となっているまは流石である。)
彼らのサウンドは、彼らを理解できる者だけに与えられたものであり、これは人類の文化をしっかりと理解することが出来る者にのみ与えられた特権と言っても良いが、本アルバムによってその特権に新たな特典が加わったと言うことが出来る。で、それを聴くと至福の時を得られることになる。(尚、彼らの芸術を理解できない方は、決して聴かないように...)
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