PAT BENATAR『GET NERVOUS』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1982年に発表された彼女の4th.アルバムである。'80'sの初頭は女性ロック・シンガーとしてエネルギッシュなサウンドを聴かせていた彼女であるが、本作はロッカーという意味ではかなり後退してしまったアルバムであり、ポップなサウンドになっている。シンガーとして捉えたら、こういう彼女も悪くないのだが、やはり女性ロック・ボーカリストとして確立していた彼女であるだけに、この変身はちょっと辛いかも... が、本アルバムはBillboardの1983年の年間アルバム・チャートでは16位、レギュラー・チャートでは最高位4位を記録するヒットとなっている。(この辺りは、彼女の名前で売れたと言うところもある。)が、本アルバムからは、特に大きなシングル・ヒット(年間シングル・チャートのTOP 100にランクインした曲)は生まれていない。
収録されているのは以下の全10曲である。『Shadows Of The Night』『Looking For A Stranger』『Anxiety(Get Nervous)』『Fight It Out』『Victim』『Little Too Late』『I'll Do It』『I Want Out』『Tell It To Her』『Silent Partner』。
本アルバムからは、『Shadows Of The Night』や『Looking For A Stranger』、そしてアルバム・タイトル・ナンバーでもある『Anxiety(Get Nervous)』など、彼女らしく聴かせてくれる曲はあり、悪い出来ではないのだが、後半になるとドンドンポップになっていき、ロッカーを期待する方には失望されてしまう。が、ポップな彼女は、それはそれでまた新たな魅力があり、『Victim』『I Want Out』『Tell It To Her』という所はそれなりに纏まっていて、'80'sサウンドらしさがある。
人は変わっていくものであり、彼女もロック・ボーカリストからシンガーへと変わっていこうとしたが、不幸だったのは、彼女があまりにも「女性ロック・ボーカリスト」として大きく祭り上げられていたということであろう。ポップになった彼女はそれなりのヒットはしたものの、大きく受け入れられることはなかった。やはり、「PAT BENATAR」と言えばパワフルなボーカルをエネルギッシュに歌うロック・ナンバーというイメージが大きすぎたのである。
が、'80'sサウンドがお好きな方には、ポップな本アルバムを介して、彼女の熱いロック魂に満ちた他のアルバムを経由して、ロックの世界に足を踏み入れるということをすればよろしいかと。尚、本アルバムは、これまでの彼女の支持者には反発されたが、ポップなサウンドが好きな人たちには受け入れられているので、決して悪いアルバムではありません。(こういうのも'80'sらしいところです。)やはり、'80's前半の時期というのは色々と会って面白いということです。
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