「陸軍中野学校」(その2) [映画(邦画)]
今回はシリーズ第1作となる1966年の「陸軍中野学校」についてです。本シリーズは全5作が製作されているが、第2作からは娯楽色を強くするというように作風に変化が見られるため、本作だけがシリーズ作品の中で少し違った雰囲気を持ったものになっている。
シリーズ第1作「陸軍中野学校」(1966年)
作品データを記しておくと、1966年の大映京都の作品で、95分の白黒作品である。監督は増村保造、脚本は星川清司、撮影は小林節雄、美術は下河原友雄、音楽は山内正である。そして出演は、市川雷蔵、小川真由美、待田京介、E・H・エリック、加東大介、村瀬幸子、早川雄三、仁木多鶴子、ピーター・ウィリアムス、守田学、たちである。
昭和13年、陸軍の少尉18人が靖国神社の側のある小屋に集まった。これは草薙中佐の極秘命令によるものであった。草薙は任務の重要さを語る。それは集められた18人を優秀なスパイに教育するということであり、ここは諜報部員を育てるための陸軍中野学校であった。その日から18人は外部との接触を完全に断ち、名前も変えられ、軍事訓練に留まらず、政治、経済、外交問題から、変装、ダンス、女を喜ばせる方法まで、徹底的にたたき込まれる日々が始まる。教育が続く中、落伍者も出て、その者は自殺させられる。1年が流れ、スパイ教育も終わろうという時期に、次郎は許嫁の雪子の姿を目にするが、雪子はイギリスのスパイであることが分かり、自分の手で始末することになる...
終盤になって、スパイ映画で活躍するスパイらしい姿(=活躍)が見られるが、本作はそのようなスパイの活躍を描いたのではなく、スパイを育てる教育課程において、その生徒たちの悲喜こもごもを描いた人間ドラマであり、青春群像劇となっている。また、白黒の映像の陰影が、「スパイ=華やいだ世界のヒーロー」ではなく、「時代の犠牲者」という影の部分を描くのに効果的であり、これがリアルさを生み出している。また、市川雷蔵のクールさも輝いていて、時代劇ヒーローとして知られている彼の違った魅力も活きている。
また、後の4本を見ることにすると、そのスタートとなる物語でもあるだけに、本作は見ておきたい所である。
↓バラでもあります。
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↓参考までに...
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