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ROGER WATERS『RADIO K.A.O.S.』 [音楽(洋楽)]

表題のアルバムは1987年にリリースされた彼の2枚目のソロ・アルバムである。R. WATERSと言えば、PINK FLOYDの一員として長らく活躍していたが、'80'sの中盤になると、P. FLOYDの分裂という事態となり、果ては「PINK FLOYD」という名前の使用権を廻っての裁判沙汰にまで発展するというドタバタ騒動へと発展した。(考えたら、今ではこのような裁判沙汰が増えているが、そのハシリのようなものになってしまった...)ということで、音楽活動以外の外野での騒動が目立つ'80's後半のFLOYDメンバーたちであったが、この1987年にはR. WATERS抜きのP. FLOYDがニュー・アルバム『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』 をリリースし、ヒットを記録している。(1988年のBillboard年間アルバム・チャートで25位を記録した。)それに対抗するかのように発表された本アルバムであるが、本アルバムはコンセプト・アルバムであって、スケールが大きく、しかも「THE WALL」のような痛烈な社会批判、メディアへの皮肉というところが強いためなのか、セールス的にはさんざんな結果であった。(でも、セールスが全てではないのがこの世界であり、なかなか内容のある良いアルバムとして仕上がっている。)が、彼の持ち味は十分に活かされているアルバムである。

最初の『Radio Waves』はやたらにポップなナンバーである。それもエレ・ポップであり、聴く方としたら取っつきやすいのだが、彼のサウンドとしたら何処か違うように感じてしまう一曲でもある。が、この曲以降には彼の本領が発揮される。続く『Who Needs Information』はミディアム・テンポの一曲であるが、どことなく「THE WALL」に通じるサウンドでもあり、サックスの音が印象に残る一曲でもある。続く『Me Or Him』のメロディ・ラインは彼独特のものであり、このサウンドは完全にWATERSのものである。

続く『The Powers That Be』はスケールの大きな一曲で、女性コーラス、メロディ・ライン、各種効果音などの良さが冴え渡る一曲である。続く『Sunset Strip』はサックスが利いたポップなナンバーで、'80's初頭のダウンアンダー勢力の台頭の頃を思わせる一曲である。続く『Home』は、'80's初頭から隆盛の道を歩み始めたシンセサイザーを使った所謂エレ・ポップが、ポップスとは異なる道へ昇華してたどり着いた一つの結論と言っても良い一曲であり、軽快なテンポのポップ・ナンバーである。続く『Four Minutes』は、それとは一転して、厚みのあるサウンドを展開するスケールの大きな一曲である。(が、どこかで「THE WALL」風のサウンドでもある。)ここでも女性コーラス、各種効果音が見事に融合している。

ラストを飾る『The Tide Is Turning(After Live Aid)』は、彼のライブでもクライマックスに演奏される一曲で、(例えばベルリンでの「THE WALL」コンサートは圧巻であった。)ややスロー気味のテンポで、平和な世界が来ることを予感させることを歌っているが、どことなく『We Are The World』に通じる曲でもある。静かながらもスケールの大きなサウンドの一曲である。

本アルバムのタイトルである「K.A.O.S.」というのは、LAの架空のラジオ局であり、ここを舞台にした現代社会への警鐘がをテーマとしている本アルバムは非常にシニカルであり、『THE WALL』にも負けないだけのものがあるが、その度合いが強すぎるところが大衆受けされない所でもある。(でも、大衆受けするようだったら、それこそ世も末かも...)が、この後の東西冷戦の終結、(当時の)東側諸国の崩壊という世界情勢の激変によるマスコミの果たした役割に対する警鐘は益々現実味を帯びているだけに、彼の先賢の目、時代を読む力には脱帽するばかりである。セールス的には良くないが、サウンド的には間違いなく一級品であり、R. WATERS抜きのP. FLOYDの『A MOMENTARY LAPSE OF REASON』と共に、FLOYDの健在ぶりを証明した傑作である。が、そこはFLOYDの血筋を受けたサウンドであり、万人にはお奨めしない。彼らのサウンドを理解できる方だけにお奨めである。

(1/28追記) 
P. FLOYDのメンバーであるDAVID GILMOURの1st.ソロ・アルバムについて、こちらで取り上げました。

 

Radio Kaos

Radio Kaos

  • アーティスト: Roger Waters
  • 出版社/メーカー: Sony
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD


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