MICHAEL SEMBELLO『BOSSA NOVA HOTEL』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1983年に発表されたアルバムであり、本アルバムには、全米No.1ヒットとなった映画「フラッシュダンス」の挿入歌である『Maniac』が収録されている。彼はこの曲のヒットで知られているが、元々長いキャリアを持っている彼は、ヒット・チャートを賑わすことを嫌い、マイペースで多数のアーティストたちのプロデュースを手掛ける道を歩んでいて、このヒット曲が例外なのである。本アルバムはそのような内容であり、『Maniac』はテンポの良いダンサブルなナンバーであるが、これは本アルバムのメイン・ストリームのサウンドではないのである。(それを知らずに、「全米No.1ヒット」ということにつられて、本アルバムを誤解しているバカがたくさんいるのは実に残念なことである。)A.O.R.のテイストを持った大人の鑑賞に堪えうる充実したボーカル・アルバムなのである。
収録されているのは以下の全10曲である。『Automatic Man』『First Time』『Cowboy』『It's Over』『Maniac』『Godzilla』『Talk』『Cadillac』『Lay Back』『Superman』。
この中からは、彼を「一発屋」扱いにする『Maniac』(1983年のBillboard年間シングル・チャートでは9位、レギュラー・チャートでは1位の座を2週獲得)があまりにも有名であるが、先にも述べたように、この曲は本アルバムの中ではちょっと異質のタイプの曲である。それよりも『Automatic Man』『It's Over』『Talk』『Lay Back』といった曲の方が彼の力をより発揮していて、味のあるバラードを聴かせてくれていて、じっくりと彼の世界に浸ることが出来る。
映画「フラッシュダンス」は大ヒットを記録し、そのサントラ盤も大ヒットをしたことから、その挿入歌である『Maniac』を歌った彼のアルバムも、同じようなタイプの曲が収録されていると思って本アルバムにたどり着く方が大勢いるようだが、そういう方には「残念でした」という言葉をお送りする。『Maniac』が目的であれば、彼のアルバムではなく、サントラ盤でことは足りるのである。本アルバムは『Maniac』のMICHAELではなく、一人のアーティストであるMICHAELを堪能しようという方のためのものである。じっくりと彼のボーカルを味わうアルバムなのである。彼のことを「一発屋」いう無知な輩は放っておいて、じっくりと味わいましょう。
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