「ULISSE」(1982) [映画(洋画)]
表題の作品は1982年の西ドイツ映画の「ユリシーズ」である。本作はJ.ジョイスの同名小説を原作であるが、これだけではなくてホメロスの「オデュッセイア」(J.ジョイスの「ユリシーズ」は元々これを参考にしているのですけど...)、更にはニール・オラムの戯曲「ザ・ワープ」も使っている。当然、先に取り上げた2本の同名タイトルの作品とは全く別の物語である。
作品データを記しておくと、時間は94分、原作はジェームズ・ジョイス、ホメロス、原作戯曲はニール・オラム、製作、監督、脚本はヴェルナー・ネケス、撮影はベルント・ウプンモア、音楽はアンソニー・ムーアとヘルガー・シュナイタの2人である。そして出演は、アルニム・ヴョルフル、ラッセル・デントン、タベア・ブローメンシャイン、たちである。
物語の方は、ジェームズ・ジョイスの小説「ユリシーズ」を大胆にかつ自由に翻案した実験作というものであり、原作小説と同様に18のエピソードから構成されている。イギリス人の旅行者・フィル・マスターズと、ドイツ人の写真家・ユリ、ユリのモデルであり愛人でもあるタベアの3人を中心とした物語で、写真家・ユリの様々な冒険物語が綴られていく。
本作の実験的な試みは、原作者であるJ.ジョイスが複数の原語に堪能であったが、それに倣ってか、複数の映画言語を取り入れている。また、18のエピソードがあるので、それぞれのエピソードは短編作品という感じにもなっていて、その短編集がユリの冒険を柱として繋がっている。で、雰囲気は「佐藤四姉妹」「スパイ道」「先生道」のようなショート作品というような感じもして、見やすいものである。→ユリの冒険という共通した所があるので、「怪談新耳袋」の第5シリーズ(最終夜)や第4シリーズのような雰囲気と言った方が適切でしょう。
本作もまた、現時点ではDVD化されていない。1967年の英米合作の「ユリシーズ」と同様にLDではリリースされていたのですけどね... 本作の実験的な試みに繋がることを、BS-iが短編ドラマ作品を結構製作していることもあるだけに、もう少し表に出てきても良いように思うんですけど...(やはり、J.ジョイスの原作小説が発禁になったということが現在でもマイナスイメージになってしまうから、DVDのリリースの方も躊躇されてしまうのですかね...)
↓原作
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