名曲探偵アマデウス#65 ヨハン・シュトラウス「ワルツ『美しく青きドナウ』」 [ドラマ]
今月最後の新作となる今回は、ヨハン・シュトラウス「ワルツ『美しき青きドナウ』」です。(3年目は月に3本ペースとなっているが、やはり半年で15本ペース(8月が夏休み?)なのでしょうかね...?)この曲はウィーン・フィルのニューイヤーコンサートではアンコール曲としてお馴染みの曲でもあり、比較的耳にすることの多い曲でもある。それだけに、満を持しての登場と言って良いですね。しかも、映画「2001年宇宙の旅」で使われているというのも有名な所であるが、それについてもしっかりと触れられていたのは嬉しいところでもありました。
今回の依頼人は劇団の座長であり、またまた個性的な人物であったが、いつもながらこの事務所には普通な人は来ませんね。
冒頭、カノンさんがコーヒーを入れて所長の所に持っていくと、所長はシェイクスピアの本を読んでいた。で、今回の所長は芝居に傾いていて、カノンさんと共にシェイクスピアの有名な台詞を口にしていた。そんな所に、ダメ出しをする声がして依頼人登場。(いつもながら、またもカノンさんたダメ出しを喰らっていました。)が、やたらと芝居じみた言動をする依頼人。カノンさんは「ト書きを読んでいる」と言って突っ込むところはちゃんと突っ込んでいたが、楽しませてくれます。
依頼人は劇団「ガンバガンバ」の主催者であり、最近は劇団の客の入りも悪くなっているということだった。カノンさんはいつものように「名曲探偵」と言うことを口にすると、依頼人は、いつもは居眠りしているような客がある日、大喝采を送ってカーテンコールとなった。その時はいつもと違って、手違いからある曲をクライマックスで流してしまったという。で、その曲は「美しく青きドナウ」ということだった。(次の日もこの曲を使うと大喝采、元に戻すと閑古鳥ということで、この曲に客が喜ぶヒントがあると思ったということだった。で、所長は依頼を受けて、いつもの調子で「名曲探偵始まって以来の…」と悦に入った台詞を口にする。が、それにダメ出しをする依頼人。それをカノンさんが「所長の決め台詞なんですよ」とフォローしていた。
依頼人が上演している演劇の台本を出す。タイトルは「孤独なドブネズミの独り言」(「路地裏の優しい猫」から「ドブネズミ」ということにしたということですかね...???)というものだったが、カノンさんのついて行けないという表情が良いですね。で「全然分かんない…」と正直に言うカノンさんはいつもの調子でした。
いつものように、曲を聴いてみましょう、ということで入って行くが、いきなり映画「2001年宇宙の旅」の中で使われたことが紹介される。(この作品は名作でSF映画の金字塔で、余りにも有名ですね。)ここで、曲の解説と映画で使われた理由の考察が語られるが、今回の謎が「演劇と音楽」ということになっているだけに、「映画と音楽」を繋げて説明するというのは面白い所です。
曲についての説明では単調な音ということでの説明となるが、バイオリンでは開放弦となる音を使っているというのは面白い所です。
今回は久しぶりにピアノを弾いたカノンさん。こういう所は毎回見せて貰いたい所です。
で、シンプルな音で作られていることの説明へ。シンプルな音を使い、しかもそれを色々と工夫していて、バリエーションを広げて使っているというのは、クラシック音楽ではよくあることでもあるが、シンプルながらも飽きさせない、というのは流石です。また、所長「僅かな食材でスパイスを利かせることで5皿のフルコースを作ってしまったようなもの」というのは実に分かりやすい例えです。
が、依頼人はシンプルなものを否定して、複雑が当然、と主張する。→この考えも分かるが、複雑すぎて訳が分からなくなってしまうというような落し穴があるものです。(某ヒーロー作品は最近はこの路線を突き進んでいるが、それが上手く消化できずに置き去りにしているものがあったり、都合良すぎる展開などで、ズタボロになっているものがあるだけに...)
所長は突然「ワルツを踊ったことがありますか」と切り出し、「無い」と依頼人が答えると「私が手ほどきしましょう」ということで、ワルツを依頼人と踊る所長。カノンさんは「上手!」と声を出すが、こういう所も表情豊かに、依頼人の気持ちを和らげてくれます。
この曲はワルツであり、ダンス・ミュージック(「ダンス・ミュージック」という単語を使うと、ディスコ・ミュージック、クラブ・ミュージックから発展してきたもののイメージが強いのだが、クラシック音楽が最先端だった時代を考えると、「ダンス・ミュージック」という言い方も納得できるところです。)であるということで、ワルツとしての特長が語られる。「音色の対比」と「合いの手の入れ方」が取り上げられて、その説明がされるが、いつものように野本先生の説明は分かりやすいです。
依頼人は「芸術」ということを口にするが、「それで客を感動させられるのですか?」といつものように所長の人生相談の様相になっていく。で、シュトラウスが影響を受けたというカール・ベックの詩を朗読するカノンさん。やはり最後の所にダメ出しをする依頼人と、それに従うカノンさん。細かい所で楽しませてくれます。(で、依頼人はそれを聴いて「OKサイン」を出していた。)
続いてJ・シュトラウスの生い立ちの説明となり、普墺戦争の話から、いよいよこの曲が作曲された背景の説明がされた。で、最初は合唱曲であり、歌詞がついていたということが説明されるが、これって「国破れて山河あり」という諺の説明にもピッタリですね。
で、「救いを求めている」ということから「希望の光」ということで、観客は曲に希望の光を見出した、と所長。カノンさんは劇団ガンバガンバの立ち上げ理由について(シャッター商店街を元気づけるため)口にすると、依頼人は自分の原点を忘れていたことに気づいて、原点に返ってやることを決意した。
今回は、ドラマ部分は35分強、曲が8分弱、ラストのオチの所が1分強という構成となっていたことで、ほぼ平均的な時間配分となっていました。
ラストのオチは、いつものように新聞を手にしたカノンさんが事務所にやってくる。「ついにやりましたよ」と言って新聞記事を広げる。すると「劇団ガンバガンバ 奇跡の復活」とあった。(記事の中で所長の指摘について「知人から指摘されて」と書かれてあったが、いつの間にか所長を知人にしているというのはぬかりない男でしたね、今回の依頼人は...)で、「良かったですね」とカノンさんが言う。すると所長は立ち上がって「違うな」とダメ出しをして「「良かったですね~」と伸ばした方が良いんじゃない」と言う。これに棒読みで「良かったですね~」とカノンさん。すると「全然感情がこもってない」と言ったまたもダメ出しをする所長。で、所長に言われた通りに言うカノンさん。が、またもダメ出し。するとカノンさんは深呼吸をしてから「良かったですね~~~」と言って、所長の足を思いっきり踏んづけていた。痛さに耐える所長は「今の感じ、よかったよ」と言っていた。
この曲は「シンプル・イズ・ベスト」を説明するにはピッタリである。シンプルだと飽きられてしまうということがあるので、それに対する工夫が必要であるが、そり工夫もシンプルな手法で、「シンプル」ということに徹底的に拘って完成されているという所は学ぶところが多いですね。(某団体ヒーロー作品の方は、もはやゴテゴテで見苦しいだけのロボットしか出てこないという酷さだし、酷いから直ぐに飽きられてしまい、だからまた直ぐに次を投入するという悪循環を驀進しているだけですし...)→クラシック音楽の世界って、他の芸術の世界にも当てはまることが色々とあるのだが、今回はそういう音楽の奥深さを改めて知ることになったということでいい勉強にもなった曲でした。しかも曲の方が親しみやすい曲であるため、頭にも入りやすく、「シンプル・イズ・ベスト」という表現技法を学ぶのにも最適という曲でもありました。
今回は色々とダメ出しされていたカノンさんだったが、その憂さ晴らしとして最後に所長の足を思いっきり力を込めて踏んづけてたことで、溜まったストレスを一気に発散させたというのは面白い所でした。それにしても、棒読みで返したり、力んで言ったりしていて、感情表現も本当に豊かなカノンさんですね。いつものように表情豊かなカノンさんだが、感情表現も豊かだと、所長のようにカノンさんを色々といじりたくなるというのも分かりました。
また、今回は舞台劇調の演出が行われていたが、カノンさんが「分からない」と言っていた辺りから「銭形泪・1st.4話」の劇団ちからわざを思い出しました。これを思うと、今回は佐藤二朗さんに登場してもらった方が良かったようにも思いました。(金剛地さんがこれまでに登場しているだけに、二朗さんにも是非...)
来週は新作ではなくて再放送となって、ファイルNo.053のパガニーニ「24の奇想曲」です。次の新作は6/7の放送で、ファイルNo.066のラフマニノフ「パガニーニの主題による狂詩曲」となります。その後は、6/14はファイルNo.067のマーラー「交響曲第1番『巨人』」です。(6/21は不明、6/28は再放送で、ファイルNo.058のストラヴィンスキー「春の祭典」が予定されているようです。)尚、今週のBS-2の放送はちょっとイレギュラーということになっていて、大相撲が終わったのに木曜日の夕方(16時~ょの方はお休みで、その代わりと言ったらいいか29日(土)の13:00から放送があります。(内容はファイルNo.064のシューベルト「歌曲『魔王』」です。)
- アーティスト: ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団,J.シュトラウス,レハール,ワルトトイフェル,Jo.シュトラウス,バウアー=トイスル(フランツ),スウォボダ(カルル)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/06/22
- メディア: CD
美しく青きドナウ~ウィーン・フィル・シュトラウス・コンサート
- アーティスト: ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,J.シュトラウス,J.シュトラウス(1世),Jo.シュトラウス,クリップス(ヨゼフ),クナッパーツブッシュ(ハンス),カラヤン(ヘルベルト・フォン)
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2001/04/25
- メディア: CD
- アーティスト: J.シュトラウス,J.シュトラウス(1世),Jo.シュトラウス,カラヤン(ヘルベルト・フォン),ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2007/09/05
- メディア: CD
- アーティスト: シュトルツ(ロベルト),J.シュトラウス,J.シュトラウス(1世),Jo.シュトラウス,ウィーン交響楽団,ベルリン交響楽団
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2003/07/23
- メディア: CD
- アーティスト: ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団,J.シュトラウス(1世),J.シュトラウス,Jo.シュトラウス,カラヤン(ヘルベルト・フォン)
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1996/12/02
- メディア: CD
- アーティスト: シュトルツ(ロベルト),J.シュトラウス,J.シュトラウス(1世),レハール,Jo.シュトラウス,ランナー,ベルリン交響楽団,ウィーン交響楽団
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2009/12/23
- メディア: CD
- アーティスト: ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,Jo.シュトラウス,J.シュトラウス,J.シュトラウス(1世),クライバー(カルロス)
- 出版社/メーカー: ソニーレコード
- 発売日: 1996/10/21
- メディア: CD
- アーティスト: クライバー(カルロス),Jo.シュトラウス,J.シュトラウス,ニコライ,J.シュトラウス(1世),ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
- 発売日: 2003/12/17
- メディア: CD
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