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名曲探偵アマデウス#74 ワーグナー「トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死」 [ドラマ]

今月最後の新作となった今回は、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死」ということで、前回に続いてまたもオペラの曲が取り上げられました。ただ、前回とは全く違う構成としていて、オペラの物語についてはより簡単にということになっていて、曲の説明が中心になっていました。→全3幕のオペラは約4時間に達する大作であり、中世イギリスの歴史などの予備知識も必要となるだけに、この説明だけでも随分と時間を取ってしまうので、出来るだけ簡単にということですね。

尚、次の新作まで、間に3週あるということから来るサービスとしては、黒川芽以さんのカノンさん以外の姿の登場ということと、シブガキ隊の『NAI・NAI 16』を使ったということですかね。そのため、難しく感じられる「トリスタンとイゾルデ」の(オペラ)の物語を優しくしていたように感じました。

冒頭、ラジオの修理をしているカノンさんだったが、「新しいの、買って下さいよ」と言うが「ラジオぐらい直せないと一人で生きていけないぞ」と言う所長。これに「何で一人で生きて行かなきゃなんないんですか?」と言ってスイッチを壊してしまったカノンさん。その表情の変化が楽しい所です。(が、昔のラジオだったら、それぐらいでは壊れたとは言えず、ちゃんと動作するものです。)

そんな所に「失礼します」と言って依頼人がやってきた。「いらっしゃい」と直ぐに対応するカノンさんの変化は、やはり客商売ということを分かっていますね。が、「あなたも取れちゃったの?」と言うカノンさん。というのは依頼人は手に車のハンドルを持っていたためだった。で、「これはマイ・ハンドルです」と言って、運転感覚を保つために持ち歩いている、自分はドライバーだ、と言った。するとカノンさんは手にしていたドライバー(ねじ回し)に目をやって笑顔で「ラジオ、直せます?」これに「そっちのドライバーじゃないんですよね、当然ながら...」と、ベタなコントで楽しませてくれました。(この後に、カラスの鳴き声が入ったらもっと面白かったのですが...)

依頼人に事情を聴く所長。依頼人はある大企業の創業者一族の屋敷で長年専属運転手をしていた。(元々はタクシー運転手(所長もこれをやっていましたね。)だったが、たまたま乗った社長が運転を気に入ってスカウトされ、かれこれ20年になるということだった。)安全運転第一で務めてきたが、最近、自分の運転がおかしくなってきた。(突然、アクセルをベタ踏みしたくなったり、急ハンドルを切ってみたくなったりする。)それは先日、社長夫人を乗せて買い物に出掛けた夜のことで、雨の夜。大渋滞の車内でのことで、ラジオからその曲が流れてきた。(黒川さんが若い社長夫人というセレブになっていて、カノンさんとは随分と違う姿を魅せてくれました。)カノンさんが「その曲の題名は?」と尋ねるが「何とかとなんとか、と言っていた気がします」と答える。「そんなんじゃ分かりませんよ」と言うカノンさんだったが、スイッチが入った所長は立ち上がり、「もしかして、それは…」と言って「トリスタンとイゾルデ」と口にした。「それです」ということで、所長は依頼を受けた。

所長は「歌はありましたか?」と尋ね、「ない」という返事を受けると「第1幕への前奏曲、でしょう」と言って、曲を絞り込んだ。で、この曲はオープニングテーマのようなものです、と説明したが、実に分かりやすい説明でした。

で、「最初から聴いてみましょう」ということで、いつものように曲に突入していく。で、いつものように表情豊かなカノンさんの反応があって、まずは「トリスタン和音」についての説明へ。主和音がないというこの独特の和音が不思議な世界を構築していくが、時代背景を含めて実に画期的だったことがよく分かりました。

で、「無意識の思い」と言うことを口にした所長。カノンさんは「何なんです?安善(あんぜん)さん(=依頼人)の無意識の思いって?」と尋ねるが、「無意識って、自分で意識できないから無意識って言う訳で...何だってと言われも何だろう」と返され「そりゃそうだ」と一人納得する楽しいカノンさんでした。

続いては「ライトモチーフ」についての説明へ。ワーグナーが生み出したものであるこの説明が、人の気持ちを表しているという説明に留まらず、「トリスタンとイゾルデ」の物語の骨組みが語られる。(4時間のオペラの物語を簡単に説明するには、こういうことにならざるを得ないでしょうが...)更に、語られるライトモチーフについては、オペラでのシーンを含めての説明がある。そして、依頼人は社長夫人と恋に落ちたのではと言う展開から、所長が「それは100%、恋かも」と言うと、『NAI・NAI 16』が流れる。すかさず「古っ」とカノンさん。こういう所の反応は実に早かったですね。

カノンさんは「音楽を聴くだけでそんなに変わっちゃうことってあるのかなぁ?」と漏らすが、所長が「媚薬だよ」と、カノンさんに負けずに素早く口にしていた。(やっぱり、良いコンビですね。)で、物語に登場する「媚薬」についての説明で、ワーグナーが音楽的な媚薬を仕込んでいるという説明へ。

依頼人は全ては音楽に惑わされたせい、気の迷いだ、と判断し、理性を取り戻せるとして、結論を出し、お礼を言って帰ろうとする。カノンさんが「奥さんとはどうするんですか?」と尋ねるが「何もございませんから」と依頼人。しかし所長は「本当にそうですか?」と言って、この曲を聴く前から奥様を愛していたのでは?と問う。否定する依頼人だったが、所長は「トリスタンとイゾルデ」の物語は中世から伝承されてきた物語であるがワーグナーが改編している、ということの説明へ。

ここでは「トリスタンとイゾルデ」の物語での愛と、ワーグナーが改変した愛、そしてワーグナーの愛についてを重ねて説明される。ワーグナーの愛は今風に言うと不倫の愛であって叶わなかったが、これって、「経験者は語る」「体験者ならでは」ということでもあって、それと願望を含めた心の内面が重ね合わされているって、スゴイですね。ただ、こういう書き方は、現在でも当たり前と考えられているが、その手法というのは昔から、更には色んな世界であったということですね。

依頼人は、奥様の社長との結婚は本意ではなかった、と語り、その説明をする。奥様の父親の会社の救済の見返りとして結婚を望まれ、恋人がいたが父に土下座までされて仕方なく結婚を受けたのだった。(この展開って、昼ドラでは当たり前に出てくる筋書きですね...)そして、奥様の不機嫌な横顔を見ていて、あの日の夜、見つめ合った目の中に深い哀しみを見てしまった。で、以前から奥様のことを愛しく思う気持ちがあったのかも知れない、と所長の言葉を認めた。が、手にしているハンドルを強く握って「しかし、一体私に何が出来ると言うんですか?」と言った。するとカノンさんがハンドルを奪い取り「こうなったら、アクセル全開!駆け落ちするしかないでしょ~う!!」と言ってハンドルを左右に切った。(このカノンさんのノリはいつものとおりですね。)が依頼人は急ブレーキを踏み「私は社長を裏切ることは出来ません」と言った。(急ブレーキでカノンさんは前につんのめるという所は芸が細かい...)

依頼人は「トリスタンとイゾルデ」の物語の結末を所長に問う。所長は「二人とも命を落とします」と言うと「そんなぁ」とカノンさんの反応と、「心中しろとでも言うんですか?」というオーバーな依頼人のリアクションが面白い所でした。所長は「ワーグナーがこの音楽で成し遂げた底に快傑のヒントがあるはずです」と冷静に答え、「トリスタンとイゾルデ」の物語の終幕部分への説明へ。

ここでは「救い」があるということで、それについての説明へ。ワーグナーは2人の魂の救済を音楽で表現し、それをこれまで使われなかった主和音を登場させることで表現した。ここで興味深いのは、ワーグナーは総合芸術を目指していたということで、だからこそ映画監督などに通じていると説明されている所ですね。「20世紀の扉を開いた」と言う言葉が印象に残りました。

所長は依頼人に「あなたはどういう選択をしますか?」と尋ねた。依頼人は少しだけ考えて「社長にお暇を頂こうと思います」と答えた。カノンさんは「じゃあ、駆け落ちするんですね」と尋ねるが、間髪入れずに「いえ」と依頼人。そして「奥様とはもう会いません」と言った。カノンさんは「それでいいの?」と尋ねるが、依頼人は、あの時愛を躱したが、それは魔法の中の出来事で、その余韻に浸っていたのだ、と言って、吹っ切れた様子だった。所長が「これからどうするのですか?」と問う。するとハンドルを握りしめて「私にはこれしか、いや、これがありますから、何とかやってみます」と答えた。で、頭を下げて帰って行った。

今回は、ドラマ部分は約36分半強、曲が6分半強、ラストのオチの所が40秒弱という構成であって、ドラマ部分がやや長く、オチを短くなっていました。尚、曲の所は、全編では4時間近い長大な作品であるので、紹介された部分(3ヶ所)のダイジェスト的な構成でした。(当然と言えば当然ですが...)

ラストのオチは、カノンさんはラジオの修理をしていたが上手く行かない。で、「こうなったら」と言ってラジオにチョップを入れた。(叩けば直るという考えがあるのですね、流石はカノンさんです。)するとラジオから声が流れてきた。それは依頼人がトラック野郎になっていて、「野菜から精密機械まで、確かな運転で運ばせて頂きます。夜露四苦!」という無線の声だった。カノンさんは軽くラジオを叩くと、その声は聞こえなくなり、『NAI・NAI 16』が流れてくる。で「何だ、混線か...」と漏らしたカノンさん。所長はイビキをかいて寝ていた。

カノンさんがいじっていたラジオであるが、以前の物語にも登場してたものですね。その時も同じようなことがあっただけに、かなり草臥れているようですね。そんなかなり年代物のラジオに対して、叩いて直そうという考えがあるというカノンさんの考えといい、叩いて直るというところは完全に昭和のテイストでした。(最新の機器の中には、叩いたら壊れてしまうようなものもあるぐらいだから、どっちが良いのか?と考えてしまうことにもなる。)ということで、今回は昭和のテイストというのがスパイスになっていて、楽しい所でした。

また、カノンさんも何だかんだで修理して使おうとしているということで、人に頼もうとしている所はあるものの、物を大切にするという所は良いところです。

オチに関しては、タクシー運転手に戻ったと予想したが、トラック野郎というのはやってくれました。これって、カノンさんのハイテンションに影響されたということですかね。しかし、ここもやはり昭和のイメージのものなんですよね。

それを思うと、全体的に昭和テイストの物語であったが、唯一、社長夫人が携帯電話を手にしていて、これだけが昭和ではないものとなっていて、昭和風のテイストのものとのミスマッチが何とも言えない独特の雰囲気を醸し出していたのが面白い所でした。また、シブガキ隊の『NAI・NAI 16』も昭和風の曲であり、所長の言葉を代弁しているようで、音楽が説明しているという今回の曲の説明にも合わせた上手い所でした。
黒川芽以さんのセレブ姿については、社長夫人には見えない(社長令嬢にも見えない。)のだが、父の会社の救済のための政略結婚で嫁いだ若奥さんというのだったらば、十分納得できました。その社長夫人と、テンションの高いカノンさんとのギャップで魅せていたというのが、3週間間があるというお休みに対する視聴者サービスだと解釈しておきます。

来週(9/27)は、ファイルNo.070のムソルグスキー「交響詩『はげ山の一夜』」の再放送です。その後も同様で、3週間が空き、次の新作となるファイルNo.075のショパン「ピアノ協奏曲第2番」は10/18までオアズケです。また、10/25のファイルNo.076もショパンで、「舟歌」の登場ですが、ショパンが2曲続くことで、取り上げられた曲でショパンが、ベートベンとシャーベルトを一気に抜き去って、単独1位になります。今年はショパンの生誕200年という年でもあるだけに、秋に再びショパン特集ということですね。(こうなると、地上波で再びショパン特集の集中放送をやるかのも...?)

 

ワーグナー : 楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲

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  • アーティスト: ワーグナー,クライバー(カルロス),ドレスデン国立管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 2000/03/01
  • メディア: CD

ワーグナー : 楽劇<トリスタンとイゾルデ> (全曲)

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  • アーティスト: ワーグナー,ベーム(カール),ピッツ(ヴィルヘルム),バイロイト祝祭劇場管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1998/05/13
  • メディア: CD

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」

  • アーティスト: ワーグナー,クライバー(カルロス),ドレスデン国立管弦楽団
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1994/02/02
  • メディア: CD

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲(フラグスタート/フルトヴェングラー)(1952)

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Naxos
  • 発売日: 2004/06/01
  • メディア: CD

ワーグナー:トリスタンとイゾルデ

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  • アーティスト: ワーグナー,カルロス・クライバー,シュトゥットガルト国立歌劇場管弦楽団,Catarina Ligendza,Wolfgang Windgassen,Grace Hoffman,Gustav Neidlinger,Gottlob Frick
  • 出版社/メーカー: GOLDEN MELODRAM
  • 発売日: 2007/07/27
  • メディア: CD

ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」 (3CD) [Import]

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  • アーティスト: ワーグナー,ヘルベルト・フォン・カラヤン,バイロイト祝祭管弦楽団,合唱団,ラモン・ヴィナイ(トリスタン),マルタ・メードル(イゾルデ),ハンス・ホッター(クルヴェナール),イーラ・マラニウク(ブランゲーネ),ルートヴィヒ・ウェーバー(マルケ王),ヘルマン・ウーデ(メロート)
  • 出版社/メーカー: ORFEO
  • 発売日: 2003/10/16
  • メディア: CD

↓オペラはこちら

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↓これはオペラではなくて映画です。

トリスタンとイゾルデ [DVD]

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トリスタンとイゾルデ [Blu-ray]

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  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
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