BILLY JOEL『STOME FRONT』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1989年に発表されたものであり、BILLY流のロック・スピリットを聴かせてくれるアルバムである。（この後もオリジナルアルバムを発表しているが、音楽的な変化も見られており、このアルバムが実質的には彼のラストアルバムのようになっているのが残念なところでもある。）1週間とはいうものの全米No.1に輝き、1990年のBillboard年間アルバム・チャートでは10位に食い込んでいるのは流石である。とは言え、'80'sは「GLASS HOUSE」から始まり、数多くのヒットアルバムを放ったBILLYとしたら、その'80'sの最後にもう一花咲かせてくれた。（その後はベスト盤などのリリースがあるが、ちょっと寂しい'90'sになってしまいました。）
まずは『That's Not Her Style』というサックスを利かせたロック・サウンドで幕が上がる。ということで、BILLY節は健在であることを知らしめてくれた。続く『We Didn't Start The Fire』は全米No.1ヒットとなり、1990年のBillboard年間シングル・チャートでも35位に輝くヒット曲である。リズミカルなテンポの良いメロディに乗せて、1949年のトゥルーマンの名前から始まり、1989年までの当時の世相に名前を残した人物や流行ったものの名前が連呼される歌詞は、ちょっとした現代史の勉強にもなり、なかなか面白いものである。（そういえば、何でしたっけ、この曲の邦題のセンスのなさは... あまりにも酷いので、覚えることを拒否しました。）続く『Downeaster "Alexa"』はスロー気味のボーカル・ナンバーであり、ソウルフルな彼のボーカルを堪能できるロック調の一曲である。
続く『I Go to Extremes』はポップのエッセンスの利いたボーカル・ナンバーであり、シングルカットしてヒットを記録し、1990年のBillboard年間シングル・チャートでは82位（レギュラー・チャートでは最高位6位）を記録したヒット曲である。ポップながらも、パワフルであり、彼のロック・スピリットが伺うことの出来る一曲でもある。続く『Shameless』はソウルフルなボーカルを聴かせてくれるパワフルにボーカル・ナンバーであり、ハートフルなBILLYのボーカルがメロディアスなメロディに乗って優しく届く一曲である。続くアルバム・タイトル・ナンバーである『Storm Front』はちょっとジャジーな感じのするミディアム・テンポのボーカル・ナンバーである。また、コーラスもちょっとしたビッグバンド風のテイストがあって、ちょっと渋い大人のサウンドの一曲となっている。続く『Leningrad』は静かなピアノの伴奏に従って展開されるスローなテンポのバラード調のボーカル・ナンバーである。初期の彼の音楽は（'70's前半）こういうスタイルであったBILLYであるだけに、やはりこういうスタイルの曲は味がある。じっくりと聴き込むことの出来る一曲である。尚、余談であるが、現在はレニングラードという名前の都市はなく、サンクトペテルブルクと名前が変わっている。
続く『State Of Grace』はミディアム・テンポのポップのエッセンスが混じったボーカル・ナンバーであり、なかなかテンポの良い秀作である。ピアノのサウンドを中心としたじっくりと聴かせてくれるスケールの大きな一曲である。続く『When In Rome』はポップな一曲であり、BILLY自身も楽しんでいると言うことが伝わってくる明るく楽しい一曲である。サウンドの方はミディアム・テンポのロック調のものであるが、こういう曲ではやんちゃ坊主という感じのBILLYの姿が影を潜めているのがちょっと残念と言えば残念なところである。ラストを飾る『And So It Goes』はピアノの弾き語りという一曲であり、優しくハートフルなBILLYのボーカルをたっぷりと堪能できる。また、静かなボーカル・ナンバーで幕が下りると言うことも、ちょっとドラマティックな所である。
本アルバムは、'80'sのBILLYの集大成という感じのものとなり、実に内容のあるアルバムである。'70'sの名作アルバムもあるが、それとは全く違ったサウンドのアルバムとして、BILLYのアルバムの中では上位にランクされる。'80'sは試行錯誤もあったが、「GLASS HOUSE」で始まり「STORM FRONT」で締めくくつたBILLY。'80'sは彼の時代でもありました。'80'sサウンドがお好きな方は外せない一枚であり、是非とも聴いてもらいたいアルバムである。（特に、世相を知ると言うことからも『We Didn't Start The Fire』は聴いて欲しい一曲である。）
- アーティスト: Billy Joel
- 出版社/メーカー: Sony
- 発売日: 1998/10/20
- メディア: CD
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