MELISSA MANCHESTER『TRIBUTE』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1989年にリリースされたものであり、カヴァー曲を集めたアルバムでもある。ということで、ここに取り上げられている曲は有名な曲ばかりであり、筆者がいつも記しているが、「名曲はいつの時代でも名曲である」ということを改めて感じさせてくれるアルバムである。とにかく、時を越えて「名曲」に新たな魂が吹き込まれて甦るのだから、これは人類が生み出した文化遺産に接することにもなり、心を豊かにしてくれることにもなる。しかも、声量豊かなボーカルでいずれの曲もとても優しく歌っているので、彼女のボーカルに聞き惚れることになり、じっくりと聴き込みたくなるばかりである。
まずはあの有名なスタンダード・ナンバー『Over The Rainbow』でスタートする。いきなりじっくりと聴かせてくれるボーカル・ナンバーで幕が上がると、続いてはテンポの良いポップな『Gypsy In My Soul』でポップな所を聴かせてくれるが、続く『La Vie En Rose』では、再びゆっくりとしたじっくりと聴かせてくれる曲となり、たっぷりと聴かせてくれる。続くはアルバム・タイトル・ナンバーの『Tenderly』であり、スローなテンポでじっくりと聴かせてくれる。
次の『Walk On By』からはソウルフルなボーカル・ナンバーが続くことになり、ジャジーで大人の落ち着いた雰囲気となる。で、余裕のあるボーカルがじっくりと醸し出す大人の雰囲気に接することになる。続く『Stardust』は往年のスタンダード・ナンバーであり、スロー過ぎるスローなテンポでハートフルにじっくりと聴かせてくれている。続く『Kind Of Man A Woman Needs』はスケールの大きなスローなテンポの一曲であり、'50'sの雰囲気を持つじっくりと聴かせてくれる一曲である。
続く『Oh, Lady Be Good』はテンポの良いジャズ楽団のサウンドが'30'sの雰囲気を醸し出していて、「音を楽む」ことが出来る一曲となっている。続く『Sophisticated Lady』はピアノのサウンドを中心としたスローなバラード調のボーカル・ナンバーであり、表現力豊かな確かな歌唱力がある所を見せてくれていて、じっくりと聴かせてくれる一曲として纏まっている。ラストを飾る『To Make You Smile Again』は静かなシンプルなメロディの曲であり、スローなテンポの曲であるが、厚みのあるソウルフルなボーカルをたっぷりと聴かせてくれる。
'80'sになってしばらくすると、'70'sのボーカル路線から脇道に逸れていた彼女であったが、そういう迷走していた時期があるからこそ、ボーカルにも重みが加わり、とても味わいのあるボーカルを聴かせてくれるようになった。しかも、ジャズのテイストをたっぷりと匂わせていて、実にソウルフルなボーカルは聴き所満載である。ここには'80's前半の彼女の姿はなく、成熟した大人の人間としての温かさ、人間性を感じるハートを持ったボーカルは、往年の名曲・スタンダード・ナンバーを確かに甦らせている。ボーカルでも、ポップなボーカル・ナンバーではなく、ジャジーなもの、スタンダード・ナンバーという時代を超えて受け継がれている「EVERGREEN MUSIC」を'90'sを迎えようとしている時期にしっかりと時の流れに刻み込んでいる。セールスの方は大きな数字を残してはいないが、こういうアルバムのことを「隠れた名盤」と言うのである。ボーカル・ナンバーがお好きな方はもちろんだが、往年の名曲がお好きな方にも是非とも聴いてもらいたいアルバムである。
↓彼女を知るにはこのベスト盤はなかなかのものです。
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