「STRAW DOGS」 [映画(洋画)]
表題の作品は、1971年のアメリカ映画「わらの犬」である。本作はペキンパー監督初の現代劇でもある。ペキンパー監督作らしく、後半のバイオレンス描写は流石である。また、イギリスの片田舎の美しい田園風景と物語のバイオレンス性とが独特の味わいを醸し出している。D.ホフマンの好演も光る作品である。
作品データを記しておくと、時間は115分、原作はゴードン・M・ウィリアムズ、監督はサム・ペキンパー、脚本はサム・ペキンパーとデヴィッド・Z・グッドマンの2人、撮影はジョン・コキロン、音楽はジェリー・フィールディングである。そして出演は、ダスティン・ホフマン、スーザン・ジョージ、ピーター・ヴォーン、ピーター・アーン、 T・P・マッケンナ、デヴィッド・ワーナー、クロエ・フランクス、たちである。
アメリカの若い数学者・デヴィッドは、平和主義の信念から妻と共にイギリスに渡り、片田舎の農家に住み、数学の研究に没頭することにした。また、その地は妻・エミーの故郷でもあった。そんな中、かつてエミーと肉体関係のあったベナーが、デヴィッドが出掛けている間にエミーを襲った。数日後、村の懇親会に出席したデヴィッドとエミーだったが、エミーには犯された時の恐怖と苦痛、また、歓びの感情が交錯していた。そんな中、村である殺人事件が起こる。それは殺された娘たちが仕掛けたことでもあった。ことの重大さに気づき逃げるジョンを、懇親会の帰り道のデヴィッドの車がはねてしまう。デヴィッドはジョンを匿うが、村人たちはジョンの引き渡しを要求してくる。暴力を否定していたデヴィッドだったが、遂に村人たちへの怒りが爆発して...
物語の前半は、片田舎を舞台にした優しい物語であるが、エミーが犯される所から後は、ペキンパー監督作品らしくなり、急にタッチが変わる。そして、暴力を否定していたデヴィッドが鬱積したものを爆発させ、同時に自分が持っていた暴力性に目覚め、それ以後のカタルシスは迫力満点である。これも、まるで別作品の様に、丁寧に描いた前半があるから、後半のバイオレンス描写が冴えることになる。この辺りはバイオレンス描写に定評のあるペキンパー監督の本領発揮である。腰を落ち着けて、じっくりと見たい作品である。
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