「EL ANGEL EXTERMINADOR」 [映画(洋画)]
表題の作品は1962年のメキシコ映画「皆殺しの天使」である。ちなみに、英語タイトルは「THE EXTERMINATING ANGEL」である。ブニュエル監督のメキシコ時代に製作された伝説的な作品であり、カンヌ映画祭で国際批評家連盟賞と映画テレビ作家協会賞を獲得している作品である。本作の次の作品(「小間使いの日記」)からはフランスに渡って活動をするようになっただけに、メキシコ時代のブニュエル監督の総決算という作品でもある。シュールに描かれているだけでなく、社会風刺もたっぷりと入っていて、更にはおふざけもあるということで、正に怪作である。
作品データを記しておくと、時間は95分の白黒作品である。原案はルイス・ブニュエルとルイス・アルコリサの2人、監督と脚本はルイス・ブニュエル、撮影はガブリエル・フィゲロア、音楽はラウル・ラヴィスタである。そして出演は、シルヴィア・ピナル、エンリケ・ランバル、ルシー・カジャルド、エンリケ・ガルシア・アルバレス、ジャクリーヌ・アンデーレ、ホセ・バビエラ、アウグスト・ベネディコ、ルイス・ベリスタイン、パトリシア・デ・モレロス、クラウディオ・ブルック、たちである。
ある夏の夜、オペラ公演が終り、上流紳士淑女たちが大邸宅のノビレ邸に集まって来る。が、彼らが邸に到着する前から、ノビレ邸では異変が起こっていて、十数人の召使いたち全て邸から去っていった。が、客たちは夜食をとり、しばし歓談し、そして散会ととなるが、誰も帰ることが出来ない。結局、執事長を含めた21人が邸にいて、誰もが外に出られないという異常事態になっていた。数日が経過して、やはり誰も外に出られず、邸の外には軍隊や警察、野次馬が集まっているが、中の様子は知るよしもない。ついには食糧も底を突いてしまい、客たちはエゴを丸出しにしていがみ合っていき...
全てが説明されてしまうという最近の作品にはない所があって、何故、外部に出られなくなったのか、何故召使いたちは逃げ出していったのか、ということは説明されないが、不条理について中途半端に説明されるよりはこの方が面白い。見る側に色々と想像させる所がある方が、本作のような物語では一段と面白くなる。
コメディ・タッチで笑わせてくれる所もあるが、シュールなところ、シニカルなところ、と共にスパイスとして利いていて、実に面白く描かれている。正にブニュエル監督の大傑作であり、映画ファンであれば見ておきたい作品の一つである。
↓本作はこれの中にあります。(3作収録されている中の1本です。)
↓参考まで
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