「ケータイ刑事」と「007」の驚くべき類似点(その98) [ケータイ刑事]
今回とりあげる「ある物」は「GPS」です。(新しい技術を取り入れたものもたまには取り上げます。)で、取り上げる物語は「ケータイ刑事」からは「海・3rd.13話」、「007」からは「トゥモロー・ネバー・ダイ」と「カジノ・ロワイヤル」です。
最初に簡単に「GPS」について触れておく。GPSとは「Global Positioning System」の頭文字を取った略語であり、グローバル・ポジショニング・システム、日本語で言うと「全地球測位システム」または「汎地球測位システム」と言う。地球上の現在位置を調べるために、人工衛星を使った測位システムである。アメリカ国防総省が開発したものであり、元々は軍事用のシステムであったが、現在は民政用途にも利用が開放されている。
地球上を周回している複数のGPS衛星の発する電波を受信して、受信機の時刻データと比較して光速を乗ずることで衛星までの距離が分かる。これを複数の衛星からの電波で計算すると、3つの人工衛星までの距離が分かると、空間上の位置が定まるということで、位置が分かる。ただ、衛星の電波は原子時計による時刻データであるが、受信機の時計はクオーツ時計であることから、誤差が大きくなる。(1/100万秒の誤差でも300mの誤差となる。)そのため、実際のシステムでは4つの衛星の距離を求め、精度を高めるようにしている。
船舶や航空機では位置を知る重要なシステムになっているが、現在ではカーナビにも利用されていて、民生用途での利用も広がっている。
「ケータイ刑事」:「海・3rd.13話」。現時点(2009/4時点)では「ケータイ刑事」の中では最も新しい物語であり、6代目の海ちゃんの最後の物語である。「さらば松山刑事! ~愛のメモリーは聞こえるか?」ということで、相棒の松山さんとの別れの物語でもある。
この物語では、松山さんが海ちゃんから離れて、独自で捜査をするのだが携帯電話の電源を切っていて、海ちゃんと連絡が取れない状態になる。やがて、真犯人の居場所を突き止めた松山さんは海ちゃんに電話を入れるが、捕まっている松山さんは電話を通して海ちゃんと話すことが出来ず、犯人との会話を伝えていた。で、これによって海ちゃんは松山さんの居場所が分かり、現場に駆けつけた。で、犯人が「何でここが?」と海ちゃんに問うと「GPS、位置確認システム」と答えた海ちゃんだった。
現在は、携帯電話にもGPSを利用した居場所を知らせるサービスが行われているが、「ケータイ刑事」はスポンサーがdocomoということもあって、新機能を紹介するというのもお約束であるが、それを物語の中で上手く使った物語でもありました。
かつては夢のようなシステムであったが、携帯電話を使った身近なシステムになっているというのは、それだけ技術が進歩したということである。最近の携帯電話の多機能ぶりには「ついて行けない」という声もあるが、平然と利用してしまうのは、流石である。
「007」:「トゥモロー・ネバー・ダイ」。1997年のシリーズ第18作で、5代目ボンドの第2作である。この作品が製作された当時は、GPSはまだ軍事用ということであり、「秘密兵器」と言って良いものである。で、中国とイギリスを対立させて第三次世界大戦を引き起こし、それを世界に独占して伝えるという野望を持つカーヴァーが目を付けたのがGPSであった。
GPSはアメリカが開発したものであり、この物語では極秘扱いのCIAの機器である。それを何者かが盗み出し、闇市場に流れたものを入手し、衛星からの暗号を操作することで、誤った位置情報をイギリス艦に与え、中国の領海内にイギリス艦を入れ(イギリス艦には領海外と算出される)、英中を対立させようとした。
この作品でのGPSは、陰謀に悪用されることになったが、当時は「GPS」は軍事用途でしか利用されていなかったので、無難な設定である。また、当時、10年も経たない間にGPSが民生で広く利用されることになるなんて、誰が思ったことでしょうかね?
「007」:「カジノ・ロワイヤル」。2006年のシリーズ第21作で、6代目ボンドのデビュー作である。この作品が製作された当時は、GPSは既に民生用途に開放されていて、カーナビなどがこれを利用していた。携帯電話にもその利用が始まった頃でもあり、ボンドが持つ携帯電話もそれに対応している。(少なくとも3代目ボンドまでの時代だったら、携帯電話ですら凄い秘密兵器ということになり、更に位置が分かるGPSなんて、任務終了後にボンドガールと関係を持つボンドに取ったら、実にありがたくない装置でしかないですし...)
ボンド自身も発信器を使っていたが、携帯電話を使ってMに連絡を取ったりしていて、その時は自然とGPS機能によってボンドの現在位置がMの方にも伝わっていた。ということで、現在ではごく普通の使い方をして、当たり前のようにその機能の恩恵を受けたことになる。
これも4代目までの頃であれば、完全な秘密兵器ということになるのに、民生用途で広く利用されているのだから、技術の進歩は凄いですね。
共通点については、「銭形海」と「カジノ・ロワイヤル」においては、共に民生用途として携帯電話に備わった機能をごく普通に利用しているというところである。ということで、文明の利器をしっかりと使いこなしているということになる。(銭形もボンドも、そういうものを使いこなせなかったら、今のポジションには以内でしょうけど...)→早い話、両者とも一般に利用されているものをそのまま利用したということなので、同じ使い方をしたと言って良い。
尚、「銭形海」と「トゥモロー・ネバー・ダイ」との間ということにすると、(ちょっと強引に導き出すことになりますが...)、これを使った人物はその機能をしっかりと把握しているということぐらいですかね。(松山さんは自分の声を使わずに自分の現在位置を知らせることが出来るとちゃんと理解していたし、カーヴァーの計画もイギリス艦には公海にいると思わせておいて、実際は中国の領海内に導くという悪用をしようとしたが、悪用するにはシステムを完全に理解していないと出来ることではないですからね。)
違いは、「銭形海」と「カジノ・ロワイヤル」との間では、「ケータイ刑事」では主人公(銭形)の相棒の現在地を知らせたが「007」では主人公(ボンド)の現在地を知らせたということである。また、「トゥモロー・ネバー・ダイ」との間では、民生用途として利用されているシステムを利用したか、軍事用途として運用されているシステムを利用したという所である。
次回はこの連載の99回目ということになるが、「ある物」シリーズを続ける予定でいます。何が登場するかはお楽しみに。
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