「THE MALTESE FALCON」(1931) [映画(洋画)]
表題の作品は1931年の映画「マルタの鷹」である。先日記した1941年の同名作品のオリジナル版ということになり、D・ハメット作の私立探偵・サム・スペードが活躍する(唯一の)長編小説の最初の映画化作品である。本作で最も有名なのは1941年のJ・ヒューストン監督、H・ボガード主演作であるが、それよりも10年前(現在から見ると、80年近く前の作品と言うことになる。)に制作されたオリジナル作品ということで、見比べてみるのも面白い所である。
作品データを記しておくと、時間は80分、白黒作品である。原作はダシール・ハメット、監督はロイ・デル・ルース、脚本はモード・フルトンとブラウン・ホームズの2人、撮影はウィリアム・リーズである。そして出演は、ビービー・ダニエルズ、リカルド・コルテス、ダドリー・ディッグス、ウナ・マーケル、ロバート・エリオット、セルマ・トッド、オットー・マテイーソン、オスカー・アッフェル、ウォルター・ロング、ドワイト・フライ、J・ファーレル・マクドナルド、アゴスチノ・ボルガト、たちである。
サンフランシスコで私立探偵をしているサム・スペード。彼の所にへルス・ワンダリーという娘が訪れて、自分の妹を誘拐したサーズビーという男の尾行をしてほしいもと依頼する。で、サムのパートナーのアーチャーがこれを引き受けた。が、翌朝アーチャーとサーズビーという男が射殺された。で、サムはワンダリーを訪ねて問い糾すと、昨日の話は嘘であり、サーズビーがアーチャーを殺したらしいということと、サーズビーは誰が殺したのか分からないと言った。その日、サムの元に、カイロ博士と名乗る男がやって来て、黒い鳥の彫刻を取り戻してくれると5ドルを出すと言った。黒い鳥は、地中海のマルタ島に十字軍の騎士がいた頃、スペイン王に献上する溜めに製作された宝石をちりばめた黄金の鷹の彫刻であって、世間の目を誤魔化すために黒いエナメルを塗ってあるものだった。これに気づいたガットマンの一味とルスたちが奪い合いをしているということが分かる。ガットマンは改めてサムに手に入れた場合の巨額の報酬を口にする。これを承諾したサムだったが、検察が動き出していた。こうして黒い鳥を巡っての争奪戦が繰り広げられていき、全ての真相が明らかになっていく...
リメイク版と比べると、スピード感が今一であって、度コスでのんびりしている感じを受けるのだが、サスペンスものという点では悪いものでは無い。これは物語の時代的なところからくるものであると思われるが、逆に言うと、のんびりとした古き良き時代の物語ということである。が、現代から見ると異質な感じがするその世界観が独特の味となっている。
本作は、41年のリメイク作が余りにも有名であって、「マルタの鷹」と言うとそちらを指すのが一般的となっているため、見ようとするとちょっと苦労するが、古き良き時代の作品として、一度は見ておきたい作品である。(特に、ボギー版と見比べるのが面白いでしょう。)
最近の映画界は、かつてのヒット作のリメイクが多いが、現代風にアレンジされた本作も、少しは見たいと思える所である。(が、'41年作のボギーのイメージが強烈すぎるだけに、サム・スペードを演じられる役者がいないように思いますが...)
↓1941年版ですが...
The Maltese Falcon (The Best Mysteries of All Time)
- 作者: Dashiell Hammett
- 出版社/メーカー: Readers Digest
- 発売日: 2001/10
- メディア: ハードカバー
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