名曲探偵アマデウス#50 ヤナーチェク「シンフォニエッタ」 [ドラマ]
1年8ヶ月でようやく50の大台に乗った今回(普通なら80の大台に乗っているべきです。)は、ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」でした。今回は30分繰り下がってのスタートということになったが、これは大河ドラマの最終回の時間拡大のためであるが、BS-hiの大河ドラマ放送は、こういう時は1時間繰り上げてスタートさせることか多いのに、定時の18時スタートだったら、繰り下がるしかないですし...
今回は久しぶりにカノンさんが(電子)ピアノを弾くという所があったが、いつ以来ですかね、こういう所があったのは。また、歌を歌ったり、本の朗読をしたり、ラストでは茶目っ気たっぷりに、ちょっとした悪戯までするということで、冒頭からラストまで、ノリに乗っていて楽しみながら色々と魅せてくれた物語でした。
所長が木を買ってきて、その世話をしているカノンさん。水をやっているが元気が無いと言っている。(「木ちゃん」と言っていました。)所長は「そのうち元気になるだろう」と楽観的な事を言うが「だと良いんですけど...」とカノンさんはシビアだった。そんな所に客が来た。直ぐに元気のない木に気づき「あらららららら」と言って気の側にやってきて「根詰まりが原因ですね」と言い、自分が開発した即効性の植物用カンフル剤「カレキニンV」を与えればいい、といって、カノンさんに渡す。「ご親切にありがとうございます」と言って受け取ったカノンさん。で、依頼人は名刺を出してカノンさんに渡す。それを目にしたカノンさんは「何か、インチキくさ~い」と漏らす。これに「何か言いましたか?」「いえ、何でも...」と早速素直なカノンさんが見られる。で、依頼人は仕事の現場で不思議なことが起こり、調べて欲しい、と本題へ。
製薬会社をリストラされた依頼人は、自ら植物用即効性カンフル剤を開発し、枯れた木を生き返らせる商売を始めた。そんな所に樹齢700年という枯れかかった桜の老木を診て欲しいという仕事が舞い込んだ。で、カレキニンVを試したが、薬は効かなかった。諦め掛けていたら思いも寄らないことで木が生き返って、新芽が出て、花は咲き、驚いた。思いも寄らないことは「1Q84」だった。(「私も読みました」とカノンさんは言っていた。)助手の娘が小説の中に出てくるクラシック音楽を聴いていた。どう考えてもこの曲が関係しているとしか思えない、ということで、調べて欲しい、ということだった。
まずは「1Q84」に登場したことで注目されたということが語られたが、時流をちゃんと取り入れていますね。で、カノンさんが「1Q84」の該当部分を朗読する。で「これはヤナーチェクの「シンフォニエッタ」だと言い当てられる人が世間に一体どれぐらいいるだろう」と読むと、「こま近所じゃ、所長ぐらいしかいませんよね」と早速食いつくカノンさん。すると、依頼人は「あんまり有名な曲じゃないみたい」から始まって娘のことをボロクソに言う。すると「色々と大変ですね」とカノンさん。「分かってくれる?」と言うことから依頼人は「もう一本、これあげる」と言って、カレキニンVを取り出した。これに「あっ、どうも」と言って笑顔を見せたカノンさん。→こういう所はちゃっかりしています。
で、第1楽章から。所長の言葉で「黒鍵だけで弾ける曲ですね」とカノンさんは口にするが、こういう所は流石ですね。で、野本先生の解説で「ペンタトニック音階(5音音階)」の説明、更に「空虚5度」(これは以前にも出てきました。)の説明で、西洋のクラシックでは禁じ手だったものと語られるが、いつものように分かりやすい説明です。
また、トランペットで出せる最低音よりも半音低い音を奏でる方法の紹介で、音の微調整用でしか使わないスライドを駆使して音を出す、というのは、考えたらこれしかないということになるのでしょうが、ある意味ではコロンブスの卵的な発想ですね。
依頼人は、管楽器の音に木を蘇らせる不思議なパワーがあるのでは?と口にする。カノンさんはこれに「天才、きっとそれですよ」と、依頼人を(さりげなく)ヨイショしていたが、こういう所は実に上手いですね。
所長は信じられない様子だったが、この先を、ということで第2楽章へ。「身体が勝手に動いちゃう」と言うカノンさんは楽しそう。で、舞曲風の調べということで、3人は立ち上がって踊り出す。(依頼人は盆踊りのように見えましたけど...)が、曲調が変わると「展開が変だ」と所長。で、交響曲の4つの楽章の構成の説明と「シンフォニエッタ」は5つの楽章があるということが語られ、伝統的な作曲法に則らないヤナーチェクの作曲法の解説へ。「タター」の説明を経て、植物が発展して成長していくようなものと説明される。
で、「秘密のパワー」という言葉から閃いた所長は簡単な楽譜を記して「ひれ弾いてみて」とカノンさんに渡す。そして久しぶりのカノンさんの演奏は、「ぞうさん」だった。そして「発話旋律」の説明へ。
ここではナレーターの阪脩が登場して、朗読するということで、ちょっとしたサービスもありました。朗読の波形と旋律の波形が似ているということから、発話旋律の解説は、実際の波形を見せていたので、分かりやすいものでした。更に、民謡には発話旋律のものが多いということ、ヤナーチェクの発表した言葉に関する論文などが紹介される。→「銭形命・11話」の台詞が全て楽器の音とした物語を思い出す所でした。
依頼人は曲の中に木を生き返らせるおまじないの言葉が紛れ込んでいるのでは?と考えるが、これにカノンさんが「こんな感じですか?」と言って歌い出すが、実に楽しい歌でした。→カノンさん、新興宗教の教祖様になれるのではないですかね...
しかし所長は曲は関係無いと考える。で、娘さんが何かをしていたのでは?と考えて尋ねる。で、ヤナーチェクが「シンフォニエッタ」を作曲した時、38歳年下の女の存在を口にする所長。カノンさんも、老木に力を与えたのは依頼人の娘と考えた。で、ヤナーチェクの38歳差のロマンスの話が語られる。そして、それから代表作の多くを書き上げたことが語られる。で、娘が何かをやっていたのでは、ということから、カノンさんは「助手って、ボスが見てない所で色々と苦労しているんですから」と口にして、この時の所長のふくれっ面が面白い所でした。
で、依頼人は木にとって一番大事なことを思い出し、一から勉強をやり直して出直す決心をして、無事に解決した。
今回のドラマ部分は35分半弱、曲の演奏は7分半弱、ラストのオチが1分強という構成でした。この時間では全曲と言う訳にはいかず、流れたのは第1楽章と、第2楽章の途中まで、第3楽章でした。
ラストのオチの部分は、今回の依頼人に倣って、カノンさんはもやしに「シンフォニエッタ」を聴かすことで、それを増やそうと試みる。ザルに少しだけもやしを入れると、早速「シンフォニエッタ」をもやしに聴かせる。所長が「何してるんだ?」尋ねると、「ヤナーチェクの「シンフォニエッタ」でもやしが増えたら、お昼ご飯になるかな~と思って...」と答える。所長は「そんなはず無いだろう」と言うとそっぽを向いてしまう。するとカノンさんは隠していたバケツからもやしをザルに山のように入れると、「あっあ゛、もやしが増えた!」と(わざとらしく)驚く。すると所長がやってきて、「これは凄い。別の野菜で試してみよう」と言って冷蔵庫に。カノンさんは所長が冷蔵庫から別の野菜を取り出そうとするのを目にすると、(カメラ目線で)ウインクをして、してやったり、という表情を見せていた。が、所長が背後から現れると「そんな訳ないだろう」と言ってカノンさんを突き飛ばし、ガッツポーズを見せてカメラに向かってウインクしていた。
何だかんだで助手も苦労するということをアピールしていたカノンさんですが、この所長にはカノンさんのような助手がいないとダメですね。所長は木を買ってきて世話をカノンさんに任せるだけだし、依頼人の木を上手く引きだして植物用カンフル剤の2本目をゲットしているなど、流石はカノンさんでした。
いつものように豊かな表情を魅せるカノンさんだったが、ラストはちょっと調子に乗りすぎてましたね。もやしを山のように入れるのは、見た目では分かりやすいですが、ちょっとやり過ぎ。が、茶目っ気たっぷりなカノンさんは楽しいです。
次回(来週11/29)は15分繰り下がって20:15からのスタートで、ファイルNo.045のヴィヴァルディ「四季・秋冬編」の再放送です。ということなので、今週と来週は再放送が続くことになりますね。24日・火曜朝のBS-hiの再放送は今回のファイルNo.050のヤナーチェク「シンフォニエッタ」、27日・金曜朝のBS-2はファイルNo.049のプロコフィエフ「組曲『ロメオとジュリエット』」、地上波は大相撲のためにお休み、28日・土曜お昼のBS-hiの再放送はお休みです。次の新作となるファイルNo.051のフォーク「レクイエム」は12/6で、やはり15分繰り下がって20:15のスタートとなります。その翌週の12/13も20:15のスタートで、ファイルNo.052の武満徹「ノヴェンバー・ステップス」、12/20はファイルNo.053のパガニーニ「24の奇想曲」と続き、年内はここまでとなります。
- アーティスト: クーベリック(ラファエル),ヤナーチェク,フィルクシュニー(ルドルフ),バイエルン放送交響楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2005/09/21
- メディア: CD
バルトーク : 管弦楽のための協奏曲 / ヤナーチェク : シンフォニエッタ
- アーティスト: クリーヴランド管弦楽団,バルトーク,ヤナーチェク,セル(ジョージ)
- 出版社/メーカー: Sony Music Distribution inc. (JDS) =music =
- 発売日: 2000/08/23
- メディア: CD
ヤナーチェク:シンフォニエッタ&ルストラフスキー:オーケストラのための協奏曲
- アーティスト: 小澤征爾,ヤナーチェク,ルトスワフスキ,シカゴ交響楽団
- 出版社/メーカー: EMIミュージックジャパン
- 発売日: 2003/02/26
- メディア: CD
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