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名曲探偵アマデウス#68 ベートーベン「ピアノ・ソナタ第23番『熱情』」 [ドラマ]

今回の物語は「花火」が登場したが、もうそういう時期になってきたのですね。ただ、6月ではちょっと早いかなという気もするが、夏の風物詩である花火大会に向けて、ということでは今の時期にピッタリということで、色々と考えられていますね。(ただ、放送の方は、ファイルNo.070ぐらいにして7月真ん中以降になってからの放送の方が良かったようにも思いますけど...)

また、一時期は「貧乏」というネタをやたらと使っていたが、最近は「バナナ」というネタがやたらと出てくるようになったが、これはこれで楽しい所です。(先日、スーパーに(別の物を)買いに行った時、思い出すように足が食品売り場に向かい、バナナだけを買ってきちゃったぐらいです...)で、カノンさんはバナナを使った所長をコントロール方法をマスターしたようですし、そろそろディープ内藤に5度目の登場をお願いして、バナナでカノンさんが所長をコントロールした所を見たいです。

今月3本目の新作(3年目は完全に月に3本というペースで進んでいます。)となる今回は、ベートーベンの「ピアノ・ソナタ第23番『熱情』」でした。ベートーベンの曲は今回で5曲目となって、シューベルトの5曲に並んでトップ・タイになりました。(ちなみに、次回と次々回で取り上げられる2人を含めると、ファイルNo.070まででのぺ69人(ファイルNo.024は特別編で、曲ではなくてカノンさんがピアノについての謎解きの溜めに表に出ていました。)となって、登場した音楽家の実数は39人です。)

冒頭、所長は好物のバナナを食べていて、カノンさんは帰宅しようとしていた。そんな中、花火大会のことを思い出し、窓から少しだけ見える花火を見るカノンさん。そんな所に依頼人がやってきた。依頼人は脱サラをして花火師となって5年という男で、ウィーンで行われるベートーベン音楽フェスティバルの花火大会に参加することになったという。しかし、ベートーベンの曲をイメージした花火である必要があって、花火には自身があるが音楽の方は今一つ分からないので、相談に乗って貰おうと考えたのだった。また、課題曲はということだった。で、所長は依頼を受けた。

昔気質の職人はパソコンは使わないが、依頼人はいつもパソコンで花火をシミュレートしているということで、それを使って自分なりのイメージで花火を作っていた。派手な曲ということで、カラフルな色を使った花火を作っていた。これに所長は最初から曲について語り始める。

第1楽章の冒頭は依頼人のイメージとは全く違うものであって、「動機労作」ということが語られていく。で、「分散和音」に拘った少ない音で出来ていることが説明される。(野本先生の説明は、いつもながら分かりやすいです。)

で、依頼人はシンプルに拘ると考えて、色数を抑えて、色の発展をするものを作った。(パソコンのシミュレーションだから、直ぐに出来てしまう。)で、3色だけを使ったものを作ったが、カノンさんは「ちょっとインパクトに欠ける」と物足りないと感じていて、所長はシンプルにしただけではなく、工夫のアイデアが隠されていることを口にする。で、「交響曲第5番『運命』」の『ダダダダーン』のモチーフが使われていることの説明となる。

同じリズムでもピアニッシモということを利用していて、これが大爆発を暗示するシグナルとして使われているということで、カノンさんは「花火が上がっていく所じゃないですか」と口にして、依頼人はそれを元にしてパソコンを操作する。で、新しい花火も取り入れて、見事なものが画面に出た。所長も「良いところに気づきましたね」と言って、ベートーベンがこの曲を作った時、最新のピアノを使っていたことが語られる。(現在のピアノよりも音域は狭いが、それまでのピアノよりも半オクターブ音域が広がったということです。)→新しいピアノの可能性を追求する音楽を作ったということだが、こういうことは現代音楽でも似たようなことがありましたね。(1970年代に登場した「シンセサイザー」を使った音楽(例えば富田勲の音楽やYMOなどのテクノ・ミュージックなど)が技術の進歩によってドンドンと演奏できる音の幅を増やしていったが、それと同じことをピアノの発展期に行っていたというのは凄いことです。

依頼人は、新しい花火を導入しているということで、ベートーベンのやっていることと自分の殺っていることが重なると言うが、所長は「一つ一つの花火が良くできていたとしても、それで観客を感動させることは出来ません。最大の問題は全体の構成です」と、なかなか鋭いことを言う。で、第2楽章の説明に入って行く。

第2楽章は第3楽章の前奏曲として、そのまま第3楽章に突入していくと言うことで、第2楽章の穏やかなサウンドと、華やかにで激しい第3楽章への繋がりとして、通常の当たり前のやり方ではなく、独自のやり方が用いられているという説明で、通常の繋ぎ方を野本先生が弾いてくれるが、なるほど、平凡なものですね。(やっぱり野本先生の説明は分かりやすい。)で、「属九の和音」と「最大限の不協和音」の説明となる。→スピード感、最初からトップギアで、というのは、ポピュラー音楽でもアルバムの冒頭(特にリードトラックに於いて)で色々と工夫されるが、筆者はHRの世界の名盤と言われるDEEP PURPLEのあの代表作を思い出しました。(クラシック音楽とジャンルは完全に異なるが、なるほど、色々と工夫していると言うことはよく分かります。)

所長は、依頼人に欠けているものはそこと指摘して、ベートーベンの直筆楽譜(のコピー)を持ってきて、全てのページにインクがにじんだ所があるということで、それについて語られる。→改訂作業を行うためにいつも楽譜を持ち歩いていたと考えられているが、こういう所はなるほどですね。(現在だと、パソコンの電子データとして持ち歩くことはあっても、紙という媒体は持ち歩かないでしょうし...しかし、紙にアナログ的に残る様々なことがあるからこそドラマがあるのであって、そういうものが残らない電子データというのは機械的で阿路家のないものに思えます。)で、ベートーベンの音楽家としての決意があるということが語られるが、電子データだとそういうものは何も残らず、単に(シミや汚れのない)綺麗な楽譜だけになってしまい、味気ないですね。で、カノンさんが「パソコンでちょこちょことやって、傑作が出来たなんて人とはえらい違いですね」と言ったが、確かにそうですね。実に奥深い台詞でもありますね。

で、花火師になろうとした当時の情熱に満ちた日のことを思い出して語る依頼人。で、自分の原点を思い出した依頼人に「大丈夫です」と所長。そしてクライマックスについての説明へ。最終的には17小節であるが、24小節あったのが書き換えられていて、動機労作の傑作としての結びになったが、納得できるまで改訂作業が出来るというのもまた幸せなことですね。

依頼人は全身全霊でクライマックスに向けて疾走すると理解し、パソコンを使わずにじっくりと考えることにした。

今回は、ドラマ部分は36分弱、曲が7分強、ラストのオチの所が1分弱という構成で、ほぼ平均的な時間配分でしたが、オチの部分が気持ち短いかなと感じました。

ラストのオチは、カノンさんは机で依頼人が置いていったパソコンをいじっていて、所長が戻ってきて、依頼人だった江戸屋かに手紙が来た、と言ってそれを読む。ウィーンの花火大会で最優秀新人賞に選ばれたということだった。これに「良かったですね」と言うカノンさんだったが、心はそちらにあらずでした。所長が「さっきから」何をしているんだ?」と尋ねる。するとカノンさんは、依頼人が置いていった花火を作るソフトで花火を作ってみている、と答えた。で、「こんな花火どうですか?」と言ってシミュレーションで作った花火を見せる。「名付けて『お団子花火』!」ということで、三色の団子とそれを貫く串が空に浮き上がりました。カノンさんは「美味しそうでしょう」とご満悦。更に「所長にはね」と言って、もう一つの作った花火を見せる。「名付けて『バナナ花火』!」ということで、黄色いバナナが1本、大きく空に浮かびました。これに所長はご機嫌で、子供のように喜んでいた。→カノンさんはすっかり所長を手名付ける方法を完全に習得しましたね。またもバナナ・ネタだったが、「またか」」と言うことにはならず、所長を手名付ける方法を知ったカノンさんということで、今後が更に面白くなりそうですね。

尚、「お団子花火」も「バナナ花火」も、実際に打ち上げられたものを見てみたいです。

今回は、最近はよく出てくるネタ(バナナ)を使っていたが、曲についての説明で「工夫」ということが語られているが、その通りで色々と「工夫」するということが隠しテーマとして描かれていたこともあって、良くできた物語となっていましたね。更に、前回のカノンさんは髪型がお団子頭だったが今回はストレートになっていたが、前回から今回のオチの「団子」花火という繋がりを仕込んであったということですね。

それにしても、所長のバナナ好きということが最近は多く登場しているが、冒頭でバナナを食べる所といい、ラストでパソコン画面に出たバナナ花火で興奮する所長といい、やっぱりただ者ではないという姿を見せるのは面白い所です。また、この調子だと、事件を解いて貰うのに、その経費としてお金を支払うのではなくて、バナナを10kgでも持っていけば所長は簡単に引き受けてくれそうですね。(前回で「ボンドガールとの合コン」が無くなったことを悔しがっていたが、バナナをある程度渡したらマルク収まりそう...)尚、ボチボチディープ内藤にまたまた登場してもらって、大学時代の所長がバナナ好きだったのか、ということを尋ねたくなりました。

来週は新作ではなくて再放送ということになります。ファイルNo.056のバッハ「組曲第3番ニ長調」の登場です。これは2年目の終盤のものとして、2010/2/7にBS-hiで初放送されたものであるが、地上波はその前のファイルNo.055までで打ち切られたので、地上波では未放送のものです。次の新作となるファイルNo.069はドビュッシー「水に映る影」で、放送の方は7/5となり、7/12はファイルNo.070のムソルグスキー「交響詩『はげ山の一夜』」となります。それにしても、3年目は新作が月に3本ずつというペースを守っていますが、8月はどうなるのでしょうかね?7月と9月も3本としたら半年で15本に達するから、2年目のように8月は夏休みとなるのでしょうか?(→再放送でも良いので、放送の方はあってほしいところです。)

 

ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ全集

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  • アーティスト: バックハウス(ウィルヘルム),ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ポリドール
  • 発売日: 1999/06/02
  • メディア: CD

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集

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ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番&第14番&第23番

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  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2006/11/08
  • メディア: CD

ベートーヴェン:ピアノソナタ第8番「悲愴」&第14番「月光」&第23番「熱情」

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  • アーティスト: ポリーニ(マウリツィオ),ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
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ベートーヴェン:月光/悲愴/熱

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  • アーティスト: バックハウス(ウィルヘルム),ベートーヴェン
  • 出版社/メーカー: ポリドール
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ベートーヴェン:4大ピアノソナタ第8番&第14番&第23番&第26番

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  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
  • 発売日: 2006/04/26
  • メディア: CD

熱情ソナタ&エロイカ変奏曲~ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番,32の変奏曲&エロイカ変奏曲

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  • 出版社/メーカー: BMG JAPAN
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皇帝&熱情ソナタ ~ベートーヴェン名演集

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↓こういうものも拾っておきます。

花火の図鑑

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  • 作者: 泉谷 玄作
  • 出版社/メーカー: ポプラ社
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花火の大図鑑

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  • 作者: 泉谷 玄作
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2009/06/18
  • メディア: 単行本

ちなみに、D. PURPLEの思い出したアルバムというのは↓です。

Machine Head

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
  • 発売日: 1987/06/17
  • メディア: CD


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