ケータイ刑事銭形雷4話[裏ネタ編]PART 6 [ケータイ刑事]
「銭形雷」の第4話「死体は夜あるく? ~病院たらい回し殺人事件」の「裏ネタ編・増補」の5回目となる今回は、劇中で登場した「ルミノール反応」について、「歯槽写真」について、これが今回の事件の原因になっていたことから「診察拒否」について、そして今回は殺人罪では亡くてこれで逮捕されたということから「死体遺棄」について記します。尚、「ルミノール反応」については「泪・39話(2nd.26話・AS4話)[裏ネタ編]PART 5」で、「死体遺棄」については「泪・33話(2nd.20話)[裏ネタ編]PART 8」で記したものをベースにして加筆しました。
尚、BS-iの本放送時に記した記事は2006/1/23付けで、MBSでの放送時に記した[改訂版]は「ここをクリック」(ここにはBS-i本放送時に記した記事へのリンクもあります。)してご覧下さい。
「ルミノール反応」:窒素含有複素環式化合物であって、化学式が「C8H7N3O2」であるルミノールを血液に加え、過酸化水素を作用させると、青白色の発光(発光波長は460nm)が起こる反応のことを言う。
この反応は科学捜査で「ルミノール試験」を行う際に応用されているものであり、血痕の鑑識作業を行うには欠かすことの出来ないものである。この試験に「ルミノール」が試薬として用いられるが、これは重要な有機物質となっている。血液は、こぼした水のように拭き取って、見た目には残っていないように見えても、その成分が残っている。で、ルミノールの塩基性溶液と過酸化水素水との混液を調べる場所に噴霧、または塗布し、部屋を暗くすると、血痕であれば青白い光を発することになる。(そこに血痕があった、ということになる。)
この反応は、血液中に含まれているヘモグロビンやヘミンがルミノールに反応することによって起こるものである。しかも微量の血液に反応することが知られている。(血液を2万倍~50万倍に希釈しても発光が起こるとされている。)また、新しい血痕よりも時間が経過した血痕の方が、ヘモグロビンがより発光しやすいヘミンに変わっているため、より濃度が低くてもこの反応が起こり、血痕があったことが確認できる。(但し、血液がその場にあったのはどのくらい前の時間だったのかまでは分からない。よって、古い血痕の場合は、ルミノール反応によって血痕があったことが確認できても、その血痕がいつ存在したのかを特定出来ないと、証拠としては万全な物にはならない。→だからと言って、血痕が残るような出来事が頻繁に起こるということは、普通ではあり得ないことですけど...)
尚、「ルミノール」の正式名称は「3-アミノフタル酸ヒドラジド」というものであるが、その別名(=「ルミノール」)の方が広く知られている物質である。水には不溶であるが、アルカリ性の水溶液には可溶であるという特徴がある。また、物質としては白色の結晶である。また、融点は319~320゜Cである。
また、「ルミノール反応」で発光する光の波長は460nmであるが、この波長の光は、青がやや強い青緑という領域の波長である。ちなみに、ブルーレイ・ディスクが使用している青色レーザーの波長は405nmであり、それよりは緑がかった色となる。(405nmであれば、青よりも紫と言った方が良く、「パープルレイ」の方が色に関してはより正確に表していると思いますが...)
英語で「ルミノール」は「Luminol」、「ルミノール反応」のことは「Luminor Reaction」と言う。
「歯槽写真」:「歯槽」とは歯根の嵌入する上下顎骨の窩(あな)の部分である。(早い話、歯の根の部分が填っている顎の骨のことである。)歯の根元の部分ということで、とても重要な部位であり、歯科学の世界でもこの部分はとても重要である。「歯槽写真」とは、その歯槽部分を写した写真ということになる。しかし、人の歯槽部分は、その人が死んで白骨化しない限りは表に出ることがないため、X線写真ということになる。
歯は、歯並びだけでなく、その治療痕によって人物を特定することが可能であるため、身元不明の場合にはその人を特定するのに重要な捜査資料となる。法医学と共に法医歯科学も犯罪捜査に於いては重要なものとなる。
この物語では、そういう重要な捜査資料を使っているということで、現実的な部分も物語に取り入れていると言うことで宜しいかと...
「診察拒否」:「診察」とは、医師が患者の体を調べ、病状や病因などを調べることである。医療機関には様々な科があるが、基本的にいずれの科でも同じように診察が行われる。(当然、対象となる部位は異なる。)「診察拒否」とは、医師が患者の診察を行うことを断ることを言う。
医師法では、診察拒否を行うことを基本的に禁じている。(正当な理由がある場合は認めている。医師法の第19条で規定されている。)これは、患者には医療を受ける権利があって、これは憲法で保障されている基本的人権と考えられているためでもある。しかし、医師法では禁じているものの、その罰則規定はない。ということで、適当な理由を作って診察拒否が行われているのが現実である。
尚、正当な理由というものは、一般的な常識の範囲で判断できることであって、病院では担当医が(入院患者の容体急変などで)診察不可能というものはよくあることである。但し、救急車が急患を搬送しようとした場合、これは実際にそういう状況になくても診察拒否をする建前上の理由にもされている。(まあ、後にその時の状況の調査が入ったら、本当だったのか嘘だったかは簡単に判明してしまいますけど...)
尚、診察拒否された場合、医師法第19条違反を理由として民事裁判で損害賠償を求めた場合、(罰則規定がないため、刑事裁判になることはないので、民事で争うしか方法がない。)診察拒否をした理由を客観的に証明することが出来ない限り、裁判に負けて賠償金を支払うことになる可能性が高い。で、裁判となって敗訴した場合、金銭的な支払いが出来ても、ニュースとして流れることで医師としての社会的な信用を失うことになるのは必至であり、個人の開業医であれば患者離れが進んで潰れるのが目に見えている...
尚、最近では2009年の新型インフルエンザの流行した時に、発熱の症状がある患者に対して診察拒否が行われていたことが明らかになったのが記憶に新しい所である。(万一、新型インフルエンザだった場合を恐れて診察拒否したというのが多かった。)また、この時は、診察を希望する外来患者に対して、何かと理由を付けてたらい回しにしていたことも明らかになっている。
この物語は2006/1/22放送ということで、新型インフルエンザの前であったが、医療機関にとっては突かれたくない所を取り上げていたということで、なかなかナイスな物語でもありました。
「死体遺棄」:遺体を捨てること、または置き去りにすることをいう。(土中に埋めることも含まれる。)人間の遺体に対してこれを行うと、犯罪行為となって「死体遺棄罪」が適用されることになる。(→刑法では「遺体」と言わずに「死体」と呼んでいる。)尚、死体遺棄罪は、人の死体だけでなく、遺骨、遺髪、または棺内に蔵置された遺体であっても対象となる。この罪が成立した場合の罰則としての刑罰は3年以下の懲役が科せられることになっている。また、墳墓発掘してこの行為を行った場合は3ヶ月以上5年以下の懲役となる。
尚、「遺体」とは死者の人格を尊重した言い方であり、身元が判明している場合に使われる。身元不明であれば「死体」と言うのが警察では一般的となっている。が、「死体」と言う言い方は、人間以外の生物に対しても使われ、「物」というイメージが強い言葉である。(→江戸時代の生類憐れみの令の時代であればともかく、「犬の遺体」というような言い方はされない。)
「死体遺棄」と混同される言葉として「死体損壊」という言葉がある。こちらは死体(遺体)を損なって壊すことである。例えば、死体を壊す例としては、遺体を食べた、バラバラにする、焼くなどが典型的なものである。また、墳墓に埋葬された遺体に対しても当てはまることであり、墳墓の発掘を行って遺体(遺灰や遺骨など)を持ち出したり、手を加える行為も該当する。これも死体遺棄と同様に、刑法では3年以下の懲役が科せられることになっている。
この物語では、死体を置き去りにしたということだったので、「死体遺棄」と言うことになるが、「ケータイ刑事」に於いて、殺人罪ではなくて死体遺棄罪で逮捕というのは珍しいことである。
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