名曲探偵アマデウス#73 ウェーバー「魔弾の射手 序曲」 [ドラマ]
今回はウェーバーの「魔弾の射手 序曲」ということで、オペラの曲としても有名な曲(「魔弾の射手」)についての説明と、「序曲」についての説明との両方があって、色濃い無いようでした。それにしても「序曲」というのを「予告編」という説明をしたのは、なかなか上手いところですね。
尚、「魔弾の射手」は部分的には色々と引用されることが多い曲であるため、誰でも全曲通して聴いたことはなくても、その一部分だけであれば、誰でも聞いたことがあって当然という有名な曲であるだけに、この登場もやっとという気もしました。
冒頭、(日本の)城のプラモデルを作りながらニコニコ顔で楽しそうな所長と、「5LDK、お値段1億円」という住宅のチラシを見て嘆いているカノンさんとの対比が面白い。更に、所長が語る「メンデルスゾーンの父親が銀行の頭取で家の敷地内に音楽ホールがあった、ベートーベンは生涯借家暮らしで50回も引っ越しを繰り返していた」という対比も面白い。が、カノンさんのこの言葉に対する反応(「だからあんなにしかめっ面をしているんだ」)はその上を行く面白い所でした。
そんな所に依頼人が「助けて下さい」と言いながら駆け込んできた。彼は輸入譲太句会社の営業マンで、共は輸入ログハウスの展示即売会だったが、そこで依頼人の大切な人が倒れた、というのだった。(「ここ、病院じゃないんですけど...」というカノンさんの最初の反応もお約束ですね。)で話を聞くことにした所長。で、郊外の森でヨーロッパの高級ログハウスの展示即売会をしていて、依頼人の恋人(=社長の一人娘で会社の専務だった。)が手伝いに来ていた。その彼女が軽食用のおにぎりを食べた途端、お腹を押さえて倒れ込んでしまったというのだった。で、その時のおにぎりを取り出した依頼人。所長とカノンさんは食べ物を目の前にすると表情が変わった。
が「それって、もしかして食あたりじゃあ?」とカノンさん。が、同じおにぎりを食べたお客さんは平気で、倒れたのは彼女だけだった。また、彼女はうわごとのように「魔弾」と呟いた。で、依頼人は、来週、彼女と行くことにしていたコンサートの演奏曲のナスに「魔弾の射手 序曲」があることを思い出した。また、病院で検査を受けた彼女に異常はなかったが意識が戻らない、ということで、彼女が何を伝えたかったのかを解いて欲しいと言うことだった。で、依頼を所長は受けた。
「序曲」の説明と「魔弾の射手」についての簡単な説明があって、本編へ。カノンさんが本を開いて「魔弾とは?」と言うことを調べて語る。(→分からないことは素直に調べるカノンさん。こういう当たり前のことをするのは良いことです。)カノンさんはそこから「誰かが毒を入れた」と口にして「捜査の鉄則、まずは第1通報者を疑え」から「本当は彼女の財産を狙っていたのではないですか?」と一気に口にするが、いきなり暴走しているカノンさん、楽しいですね。
依頼人はカノンさんの言葉を否定して、まだ彼女と結婚できるか分からない、結婚は営業成績1位にならなければならない、どうしても勝てないライバルがいる、ということを口にすると、所長は、曲の中から事件の手掛かりになることを探してみようということで、曲に入っていった。(暴走気味でテンションの高いカノンさんの制御も上手い所長ですね。)
曲の最初を聴いて、カノンさんの豊かな乾燥がいつものように語られる。で、この部分は4本のホルンの旋律ということから、それが示す場所の説明と、ホルンについての説明が行われる。ホルンは狩猟で使われたもので、森が舞台、ドイツの深い森、ということで、上手く繋がっています。更に、ホルンの音色の秘密ということで、当時のホルンについての説明へ。現在のホルンは指で音を変えることが出来るが、当時のホルン(ナチュラル・ホルン)はそんな仕掛けも無く、管の長さの違う2種類のホルンを使っていること、更に管の違いなどについて語られる。「ヘ長管」と「ハ長管」の違いによる音の違いは、「百聞は一聴にしかず」とでも言うように、よく分かりますね。(とても貴重な所でもありました。)
続いて、「魔弾の射手」の物語のおさらい、ということで、オペラ「魔弾の射手」の物語についてを、カノンさんが紙芝居で語ってくれる。(この時、所長と依頼人が飴ちゃんでも口にしながら聴いていたら、更によかったと思います。)→物語のあらましということでは、とても分かりやすい紙芝居でした。で、この物語と依頼人の物語が似ていると言うことを口にするカノンさん。→いつもながら、本当にこういう所はネタにしているだけに...
で、所長は「何か隠し事をしていませんか?」と依頼人に尋ねるが、それを否定する依頼人。所長は「それなら良いのですが...」と言うが、この時の台詞が棒読みになっているのが面白い所でした。
で「続きを聴いてみましょう」ということで、曲の続きへ。ここでは「悪魔のモチーフ」「アガーテのモチーフ」「暗い力のモチーフ」について語り、これらがオペラ本編から引用されたものであって、「序曲」がオペラ本編の予告編になっているということの説明となる。→現在でも、映画の予告編とか、ドラマの次回予告などがあるが、これらと全く同じこうよ作られたものであるが、オペラにもそのようなものがあった、というのは驚きました。(→やはり、「宣伝」となるものは昔も今も必要と言うことですね。)
また、主人公の心情を表現する手法についての説明もあったが、心情表現ということから、カノンさんが「大丈夫ですか?」と依頼人に言い、所長が、「(物語で)誘惑に負けて魔弾を手に入れるのです」と言うと、立ち上がった依頼人は「そんなつもりでやったんじゃ...」と漏らしてしまった。するとカノンさんが「やったって、何をやったんですか?」と目を丸くして突っ込んだ。(なかなかユニークなカノンさんですね。)すると依頼人は「ごめんなさい」と誤って、おにぎりに「ライバルがこれ食って腹こわせ」と念じたことを告白した。するとカノンさんが「それだ」と言って、念力で魔弾となったおにぎりがライバルではなくて彼女に、と言い、所長が「時として人間は科学の力では証明できない不思議な力を発揮することがあります」と続き、2人でオカルト探偵のような感じになっちゃいました。依頼人は「そんなバカな」「悪魔なんている訳無い」と否定するが、カノンさんのとどめの一言「悪魔は家田(やだ)さんの心の中にいたんですよ」→このコンビ、依頼人の心の奥までも見抜いてしまうが、こういう時のコンビプレーはスゴイですね。
で、依頼人は努力していて、自分のセールスに自信を持っていることを示すが、所長は「自分の売り方に問題があると考えたことはありませんか?」と言って、ウェーバーの努力を見習うべきと口にして、依頼人の人生相談とその解決の糸口に一気に飛びました。
で、オペラの歴史について簡単に説明され、ドイツ語によるドイツ人によるドイツ人のためのオペラを作ろうとしたことで、ドイツ民謡を元として、ドイツづくしの新しいオペラを作ったということが説明された。で、カノンさんは、それは依頼人と逆、と指摘し、それに触れる人のことを考えるべき、と所長が指摘し、依頼人も納得した。
で、彼女がどうなるのか、と口にした依頼人。所長は「魔弾の射手」の元となった民謡における物語の結末と、ウェーバーの用意した結末とが異なっているということ、そしてこの結末の変更にウェーバーの強い思いが込められているという説明がされる(アガーテの愛の力が2人を救ったという結末)。→「原作通りが最良ではない」ということの一例でもありますね。但し、原作通りの結末の方が素晴らしいものもたくさんありますけど...
そんな時、依頼人の携帯に着信があって、電話に出る依頼人。で、社長からで、彼女が意識を取り戻し、依頼人に会いたいと行っているということだった。で、依頼人は彼女の愛に応えられるよう日本人のことを考えたログハウスを売っていくことを誓い、お礼を言うと走って出ていった。カノンさんが呼び止めようとするが、それは遅くて、依頼人には届かなかった。で「まだ最後の謎が解決していないのに...」とカノンさん、「何故、彼女は突然倒れてしまったのか...」と所長。ということで、実に行きのあったコンビプレーを最後まで見せていました。
今回は、ドラマ部分は約34分半、曲が8分半強、ラストのオチの所が1分弱という構成であって、ドラマ部分がやや短めで曲の所が長い構成でした。しかし、これでも曲の部分は「中略」があったのだが、これも仕方のないところですね。
ラストのオチは、依頼人からの電話にカノンさんが応対していて、所長はお城のブラモデルを作っていた。電話を終えたカノンさんが顛末を語る。彼女は依頼人のことが心配で、ここ一週間ぐらいずっと寝ていなかったということで、昏睡状態みたいになったということだったと語った。すると所長は「何だ、寝てただけか」とちょっと呆れ顔。が、「ということは」と言って(依頼人が置いていった)おにぎりに目を向けた。カノンさんも「この美味しそうなおにぎりは安全ってこと」と言って、手を伸ばそうとする。が、所長が横を向いて「響くん、あれ何だ?」と言って指をさす。で、それにつられてカノンさんはよそ見をした。で、その隙に所長は2個あったおにぎりを両手で奪い取り、それぞれを口にした。カノンさんは「あ゛あ゛っ~、所長、ずるい!」と叫んで、逃げる所長を追いかけていった。所長は「だって絶対安全かどうか分からないこんなのを響くんに食べさせて、お腹こわしたら大変です」と、それらしいことを言って逃げ回っていた。カノンさんは泣きっ面になって所長を追いかけ続け「ああ~、おにぎり、下さいよ~」と言い続けていた。→「食べ物の恨みは怖い」だけに、カノンさんの念力が所長を躓かせて、顔面痛打とかなったりして...???
冒頭では、所長とカノンさんの対比が面白く、事件の推理を始めると、いつしかコンビとして絶妙の活きの良さを見せ、ラストにはたっぷりとカノンさんで遊ぶ所長。何だかんだで、このコンビは楽しいですね。今回も表情豊かなカノンさんはたっぷりと魅せてくれました。
尚、オチに関しては、「なんだぁ...」ということでは悪くないのだが、ただ眠りに落ちていたのを「昏睡状態」と認識してしまうというのにはちょっと無理があるように思うのですが...(ということで、結末はウェーバーのような見事な、ということにはならなかったが、この部分を「見事」と言えるものにもう一捻り欲しいところでした。)
来週(9/20)は、ファイルNo.074のワーグナー「トリスタンとイゾルデ 前奏曲と愛の死」です。で、9月の新作はここまでと言うことになり、同時に3年目の上期の新作もここまでで打ち止めとなります。(9/27は何かの再放送ということになっています。)で、3年目の上期の新作は15本ということになって、2年目の上期が14本だったものの、半年に15本というペースが続きますね...
- アーティスト: アンセルメ(エルネスト),ウェーバー,メンデルスゾーン,スイス・ロマンド管弦楽団
- 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
- 発売日: 2001/01/25
- メディア: CD
- アーティスト: ハウシルト(ヴォルフ=ディーター),ウェーバー,キント,ドレスデン国立歌劇場管弦楽団
- 出版社/メーカー: コロムビアミュージックエンタテインメント
- 発売日: 2007/09/19
- メディア: CD
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