LOVERBOY『GET LUCKY』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1981年に発表された彼らの2nd.アルバムである。彼らはカナダ出身のバンドであるが、サウンドはアメリカン・ロックそのものであり、これぞ'80'sロックというサウンドを奏でている。当時は第二次ブリティッシュ・インベージョンの波に飲まれて、アメリカ勢が元気がなかった時期であるが、同じ北米のカナダ出身の彼らは、アメリカン・スタイルのロックのリズムを奏でて、低迷するアメリカを支えていた。(でも、カナダとオーストラリアという所が第三勢力となってアメリカの音楽シーンにかなり食い込むことになったのもまた事実である。)ということで、本アルバムは1982年のBillboard年間アルバム・チャートでは7位に食い込む大ヒット(レギュラー・チャートでも最高位7位を記録している。)となり、カナダ勢もその存在感を示すことになった。
収録されている曲は次の9曲である。『Working For The Weekend』『When It's Over』『Jump』『Gangs In The Street』『Emotional』『Lucky Ones』『It's Your Life』『Watch Out』『Take Me To The Top』。この中からは『Working For The Weekend』がシングル・ヒットを記録していて、1982年のBillboard年間シングル・チャートでは93位、レギュラー・チャートでは最高位29位にランクインしている。(「それいけウィークエンド」という邦題がお茶目なところです。)テンポがよいロック・チューンであるが、ポップな一面も持っている曲であり、聴きやすい一曲である。この他にも、キャッチーでノリの良い曲があり、『Lucky Ones』などはなかなか聴かせてくれるロック・ナンバーであるし、『Take Me To The Top』はナイスなロック・チューンである。
尚、『Jump』というタイトルはこの時期に他のアーティストが放ったヒット曲がいくつかあるが、それとは別の曲であり、これも数多くある「同名異曲」の一つである。(まあ、このタイトルの曲というのは、数年に一度は新曲として出会うタイトルなんですが...)また、LOVERBOYとしての活動以外に、マイク・レノは映画「FOOTLOOSE」のサントラ盤でHEARTのアン・ウィルソンとデュエット・ソングを歌うなどの活躍をしているが、本アルバムはLOVERBOYとしての出世作でもあるので、じっくりと聴いてもらいたい所です。
LINDSEY BUCKINGHAM『LAW AND ORDER』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1981年に発表されたFLEETWOOD MACのメンバーの一人であるLINDSEY BUCKINGHAMのソロ・デヴュー・アルバムである。が、本作にはMACのメンバーも参加していて、サウンドはMACのものとなっていることから、彼のソロ・アルバムなのか、形を変えたMACとしての企画アルバムなのか悩んでしまうアルバムでもある。(が、やはり彼のソロ・アルバムです。)が、これによってサウンドはMAC風のものであり、とても聴きやすいものとなっている。
収録されているのは、『Bwana』『Trouble』『Mary Lee Jones』『I'll Tell You Now』『It Was I』『September Song』『Shadow Of The West』『That's How We Do It In L.A.』『Johnny Stew』『Love From Here, Love From There』『Satisfied Mind』の全11曲である。この中からは『Trouble』がシングル・カットされてヒットを記録している。(1982年のBillboard年間シングル・チャートで45位、レギュラー・チャートでは最高位9位を記録している。)また、曲名を見ると、往年のヒット曲(所謂「オールディーズ」といわれるものです)と同じものが何曲かあるが、同名異曲ではなくてカヴァーである。ということで、名曲に新たな息吹を吹き込んでくれたということもあり、とても親しみやすいアルバムとなっている。
MACのファンであれば違和感なく入っていくことが出来るアルバムであるが、そうでない方にもとても聴きやすいサウンドであり、特にポップス・ファンの方にはお薦めしたいアルバムである。
ただ、一つだけ不満点を言うと、全11曲が収録されているとは言っても、収録時間は約36分ということで、ちょっと短めということである。現在のCDの時代であれば、確かに36分というのは短いが、本アルバムリリース時はCDはまだ搭乗前であり、LPの時代である。LPの時代では「標準」から「やや短め」ということになるが、「短い」ということが気になるレベルではない。ということで、リマスター盤にボーナス・トラックを追加収録してリリースが待たれるアルバムである。まあ、聴いてみてください。
LIONEL RICHIE『LIONEL RICHIE』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1982年にリリースされたものであり、コモドアーズから独立してソロ・シンガーとなった彼が放った最初の大ヒット・アルバムでもある。本アルバムはシングル・カットされた曲が次々とチャートの上位に顔を出したこともあり、1983年のBillboard年間アルバム・チャートでも6位、レギュラー・チャートでも最高位3位を記録する大ヒットを記録している。当時のアメリカの音楽シーンは、「第二次ブリティッシュ・インベージョン」の波によってイギリス勢の独壇場に近かったが、そんな中、アメリカ勢として一人で気を吐いていたのが彼でした。ということもあって「ミスター・アメリカン」という名前で呼ばれるようになり、'80'sの前半は大活躍をしていた。本作の勢いはアメリカ勢の砦といったこともあり、1983年のBillboard年間シングル・チャートにも3曲が顔を並べている。まずは年間29位に『You Are』(レギュラー・チャートの最高位は4位)がランクインしていて、43位には『My Love』(レギュラー・チャートの最高位は5位)、そして2週間全米No.1の座に輝いた『Truly』が年間47位にランクインしている。
収録されている曲は、『Serves You Right』『Wandering Stranger』『Tell Me』『My Love』『Round And Round』『Truly』『You Are』『You Mean More To Me』『Just Put Some Love In Your Heart』の9曲である。いずれの曲もがソウルフルでありとてもハートフルな暖かさを感じるコンテンポラリー系のボーカル・ナンバーとしてまとめられていて、じっくりと聴きたくなる曲ばかりである。お薦めは、やはり全米No.1ヒットとなったバラード・ナンバーの『Truly』である。ゆったりとしたスロー・テンポでじっくりと歌われるメロディアスなこの一曲は心を洗ってくれる名曲であり、この曲があるからこそ「ミスター・アメリカン」でもある。また、ソロ・シンガーとしての道筋をはっきりと決定づけた『You Are』、じっくりと聴かせてくれる『Tell Me』や『My Love』も捨てがたいところである。というよりも、早い話、捨て曲が全く無く、いずれの曲もがクオリティが高く、全曲お薦めと言うのが正直なところなのである。
彼は、翌1983年に発表した「CAN'T SLOW DOWN」が全米No.1の座を獲得する大ヒットとなり、シングル・カットされた曲がヒット・チャートの上位に必ず入るというもの凄い状況になるが、その勢いは本作で既に現れていて、収録されている全9曲は全部シングル・カットしてもいいぐらいのものである。アメリカ勢が元気がなかった'80's前半において、まさにアメリカ勢の中心として時代にその名を刻み込んだ名盤であり、'80's前半の音楽シーンを語る上で、これが無ければ全く話にならないというアルバムである。まさにベスト盤と言っても良いようなクオリティの高い次作「CAN'T SLOW DOWN」と共に、本作もじっくりと聴きましょう!
↓次作「CAN'T SLOW DOWN」はこちらです。しかし、この名盤も本作があったから生まれたものです。
LAURA BRANIGAN『BRANIGAN』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは、1982年にリリースされた彼女の1st.アルバムであり、ウエスト・コースト・サウンドの王道を行くボーカル・アルバムとしてまとめられている。しかも、そのウエスト・コースト・サウンドを代表するミュージシャンが参加していて、ご機嫌なサウンドを奏でている。この当時のウエスト・コースト・サウンドは、みんながみんなのアルバムに参加するファミリー工房のような所があり、クオリティが高いアルバムが続出したが、本アルバムもそんな中の一枚である。声量豊かで伸びのある彼女のボーカルが印象的であり、ポップで聴きやすいアルバムである。
収録されているのは以下の9曲である。『All Night With Me』『Gloria』『Lovin' You Baby』『Living A Lie』『If You Loved Me』『Please Stay, Go Away』『I Wish We Could Be Alone』『Down Like A Rock』『Maybe I Love You』。この中からは『Gloria』が全米第2位まで上昇する大ヒットを記録しており、この曲は1983年のBillboard年間シングル・チャートでは56位にランクインしている。テンポの良いリズミカルなダンサブルなポップ・ナンバーであり、キャッチーなメロディと伸びがあり、張りのある彼女のボーカルが聴き所の一曲である。この曲以外でも歌唱力のあるところを披露していて、全体的には大人の鑑賞に堪えるボーカル・チューンが揃っている。お薦めは『Gloria』は捨てがたい一曲であるが、この曲以外には『All Night With Me』『Please Stay, Go Away』『Maybe I Love You』という所を挙げておく。単なるポップスではなく、じっくりと聴かせるボーカル・アルバムとして仕上げられていることから、ふとしたときに聴きたくなる佳作が集まっている。
本アルバムはLAURAのデヴュー・アルバムであるが、初めてのアルバムとしたら実にこなれているという感じがする。というのは、本アルバムは1982年のリリースであるが、前年の1981年には既に完成しており、また彼女もバックバンドの一員として活動をしていて、じっくりと腕を磨いていて、満を持してのリリースであった。ということで、デヴュー・アルバムにもかかわらず完成度が高いのである。'80'sのポップ路線のアルバムでもあるが、大人の鑑賞に十分堪えうるボーカル・アルバムでもあり、聴き込みたくなる一枚である。