「SUNRISE」 [映画(洋画)]
表題の作品は1927年のアメリカ映画「サンライズ」である。(1927年というと、昭和2年である。)日本では1928年に公開されることになった。サイレント映画の金字塔として高い評価を受けているドイツ人映画監督F・W・ムルナウの「最後の人」をアメリカに招いて製作された作品である。尚、本作は台詞は無く、音声は音楽と効果音のみというちょっと変わった作品である。(当時としては、普通のサイレント映画に音楽のみがあるという位置づけだったことになる。)
作品データを記しておくと、時間は95分、白黒作品である。原作はヘルマン・ズーデルマン、監督はF・W・ムルナウ、脚本はカール・マイヤー、撮影はチャールズ・ロッシャーとカール・ストラスの2人である。そして出演は、ジャネット・ゲイナー、ジョージ・オブライエン、マーガレット・リヴィングストン、ボディル・ロージング、J・ファレル・マクドナルド、ジェーン・ウィントン、ラルフ・シパリー、アーサー・ハウスマン、エディ・ボーランド、たちである。尚、本作は第1回アカデミー賞で「撮影賞」を受賞している作品でもある。また、「芸術的優秀作品賞」も受賞している。更に、ジャネット・ゲイナーは第1回アカデミー賞で主演女優賞を受賞しているのだが、「第七天国」「街の天使」「サンライズ」の3本でのノミネートであって、その中の「第七天国」で受賞している。(そのため、本作では主演女優賞受賞とはいかなかった。)
ある入江を挟んで、避暑地として賑わう町とひっそりとした村落があった。町からある女が村落にやってきて、ある農夫の男を誘惑した。男は妻子がいる身でありながらも、女に惹かれ、言うがままに財産を売り払ってしまう。そして妻を殺し、女と共に都会へ逃げて行く計画を立てた。で、男は妻を誘って町に行く途中、船を沈めて妻を殺すことを決めて、町に向かった。しかし、いざとなると妻を殺すことが出来なかった。しかし、妻は夫に恐怖を感じ、逃げてしまう。男は妻を追い、昔を思い出して仲の方は修復し、一緒に村落に帰ることにした。が、帰路は嵐となり、2人が乗った船は沈んでしまう。男は助かるが、妻は賢明の捜索を行っても発見できなかった。それを知った町の女は、男が妻を殺したと思い、男の元に行く。が、女の姿を見ると、男は憤り、女を殺そうとする。そんな所に、妻が助かったという知らせが届いた。男は急いで家に帰り、妻の看護をする。そして、改めて真実の愛を誓う。妻も意識を取り戻し、夫婦は喜びを感じながら、人生の再出発を切った。
物語の方はシンプルなものであり、特にこれという捻りも無い。しかし、台詞を使わずに表現するという手法が、トーキーが当たり前である現在では逆に新鮮に感じられる。また、映像の方も白黒画像であるが、色合いが感じられるような微妙な陰影があるのも素晴らしい所である。
物語の方は、現在ではシンプルすぎて「何だこれは?」と言われてしまうものであるが、映像表現ということでは色々と見所のある作品である。こういう作品を見ると、最新技術を駆使したCGを派手に使った映像が誤魔化しの映像のようにも感じられてしまうのだが、あなたはどうですか?
FRAZIER CHORUS『RAY』 [音楽(洋楽)]
表題のアルバムは1991年に発表された彼らの2nd.アルバムである。'80's終盤に結成された彼らは、これぞ'80'sサウンドというエレポップに、フルート、クラリネット、ボンゴという全く違う世界の音を奏でる楽器を導入するということを行い、機械的なサウンドとアコースティック的なサウンドの融合が不思議な世界を築いていた。ただ、彼らはブレイクすることなく、本アルバムが実質的なラスト・アルバムになってしまった。(1996年に3rd.アルバムを発表するが、それは解散するために発表したようなものであった。)
収録曲は以下の全10曲である。『Cloud 8』『Heaven』『We Love You』『Never Wake Up』『All The Air』『Walking On Air』『Nothing』『The Telephone』『Here He Comes Again』『Prefer You Dead』。
この中からシングル・カットされたのは都合3曲てある。まずは『Nothing』がイギリスで最高位51位を記録し、『Cloud 8』はイギリスでは最高位52位であったが、アメリカでBillboardのモダン・ロック・チャートで17位を記録していて、アメリカでの唯一のヒット曲となった。また、『Walking On Air』はリミックスされたものがシングルとしてリリースされて、イギリスで最高位60位を記録している。
お薦め曲は、シングル・ヒットを記録している『Nothing』と『Cloud 8』、それ以外では『Heaven』『All The Air』『Prefer You Dead』という所をピックアップしておく。尚、後にリミックスされてシングルとなった『Walking On Air』は、アルバム・バージョンということで貴重なものである、ということだけに留めておくことにする。
サウンドとしてはポップでありながらも心を癒してくれる爽やかなものであり、心地良さを与えてくれるものである。この点では爽やかな清涼飲料水のような感じがするのだが、清涼飲料水は飲んでしまうとそれまでであるが、彼らのサウンドも何故かそれと同様なことを感じてしまう。これは、ポップな要素とアコースティックな要素が十分に融合しておらず、水と油とが分離するように十分に融合できていないと言ったらいいのでしょうね。ということで、サウンドの方に派手さが無く、纏まりすぎているためにスケールが小さいというのが残念なところであった。
'90's初頭というと、百花繚乱、何でもありという状況になっていただけに、彼らのような爽やかさを求めるサウンドも決して悪いものではない。ただ、タイミングが悪かったと言ったら良いのか、'90'sに台頭したヒーリング・ミュージックの波に乗れなかった所がちょっと残念でした。
「ケータイ刑事」と「007」の驚くべき類似点(その173) [ケータイ刑事]
今回のテーマは「処刑台の上の主人公」です。(「処刑台」というのは、そこで処刑を行う台ということであって、実際に「処刑」を行うかどうかはまた別問題である。)で、取り上げる物語は「ケータイ刑事」からは劇場版第2作の「ケータイ刑事THE MOVIE 2 石川五右衛門一族の陰謀 ~決闘、ゴルゴダの森」(以下、「M2」と記す。)、「007」からは「ゴールドフィンガー」です。
「ケータイ刑事」:「M2」。2007/3/10劇場公開となった劇場版第2作であって、現時点では劇場版の最新作である。本家の四女・零ちゃんと分家の長女・雷ちゃんが登場し、「噂の刑事トミーとマツ」の2人が25年ぶりに顔を揃えてコンビを復活することにもなった作品である。また、マツこと松山さんは、本作で「ケータイ刑事」に初登場し、後のテレビシリーズ「海・3rd.」と「命」にも登場した。劇場版と言うことで、TVシリーズよりも色々とサービス精神に満ちた娯楽作品である。ただ、お祭りと言うことでは「M1」の方が上であって、スケールダウンしている所もあって...
物語の後半で、雷ちゃんと零ちゃんは廃工場で石川一族と対峙することになる。雷ちゃんは銃を構えて、自分たちが誰なのかを問うが、用心棒の佐々木が銃を撃つ。それを逃れようとした時に零ちゃんは足を捻って怪我をしてしまった。雷ちゃんは「必ず助けに戻る」と言って、その場から走って逃げて行き、零ちゃんは捕らえられてしまい、小百合は零ちゃんに(洗脳の)処置をするように命じた。
零ちゃんは寝台の上にロープで縛り付けられていたが、手は自由に動かせた。で、ポケットから携帯電話を取りだして、雷ちゃんと連絡を取り合う。が、そこに小百合がやってくる気配を感じた零ちゃんは、電話を切らずにそのままにした。(これによって雷ちゃんは、小百合と零ちゃんの話を丸々聴くことになった。)
小百合は零ちゃんに、記憶をリセットするアンプルを注射しようとする。が、零ちゃんは、記憶がリセットされるなら本当のことを教えて欲しい、と言い、小百合は本当のことを話した。(当然、電話を通して雷ちゃんも聴いている。)
そして、零ちゃんと雷ちゃんの本当の名前、身元を話し、自分が石川家第28代目当主ということ、そして計画の全容を話した。話し終えると、零ちゃんの記憶をリセットするアンプルを注射しようする。が、零ちゃんが抵抗したことで、アンプルの入ったガラス製の注射は床に叩きつけられて、破片となって砕けた。
これに小百合は怒り、零ちゃんに張り手を入れる。が、その時、雷ちゃんが警報装置に発見されたようで、警報音が鳴り響いた。小百合は零ちゃんの処置を後にすることにして、雷ちゃんを捕まえ、2人まとめて処置すると言うと、その場から去る。で、佐々木が零ちゃんを改めて縛り上げた。(その後、零ちゃんは車椅子に乗せられて、別の場所にいた。)
「007」:「ゴールドフィンガー」。1964年のシリーズ第3作であって、世界的で大ヒットした前作(「ロシアより愛をこめて」)を受けて、秘密兵器などの娯楽的要素を強化した作品で、大ヒットを記録した作品である。
ゴールドフィンガーを追ってスイスに入ったボンドは、ゴールドフィンガーの乗った車が入った工場(オーリック・エンタープライズの工場)に潜り込んで、情報をえるが、ゴールドフィンガーに姉を殺されたテリー。マスターソンが復讐を使用としているのに巻き込まれ、テリーを連れて脱出しようとする。が、テリーが殺され、ボンドも捕らえられてしまった。
一時は、ボンドカーのアストン・マーチンDB5で逃走を試みるが、工場内に仕掛けられていた鏡に惑わされて、逃走に失敗して壁に突っ込んでしまった。で、再び囚われの身となったボンドが気づいた時には、黄金の台の上に磔にされていた。
ゴールドフィンガーは、ボンドの正体を既に知っていて、ボンドを処刑しようとする。用いたものは工業用のレーザーであって、これでボンドの体を真っ二つにしようとする。動けないボンドの股下からレーザー光線は黄金の台を切断していく。絶体絶命のボンドは、「秘密を喋るぞ」と言うが、ゴールドフィンガーは「死人に口なし」と言ってボンドに耳を傾けなかった。
もはや絶体絶命のボンドは、ゴールドフィンガーが口にしていた「グランドスラム作戦」の名前を出し、賭に出た。で、この名前を聴いたゴールドフィンガーは心変わりをして、ボンドをもう少し生かしておくことにした。で、レーザー光線を停止させた。
ボンドはレーザー光線の餌食になるところを間一髪で逃れたが、麻酔銃を撃たれ、再び意識を失い、アメリカに運ばれていった。
共通点は、零ちゃん/ボンドがこの状況になる直前に負傷していたこと(「ケータイ刑事」は足をくじいた、「007」は車が工場の壁に突っ込んだ。)、そしてその状態で敵に捕らえられたこと、処刑台となった台は工場のある一室にあったということ(「ケータイ刑事」は廃工場を利用した石川家のアジト、「007」はオーリック・エンタープライズの工場の一室だった。)、共に絶体絶命の窮地に追いつめられること(「ケータイ刑事」は記憶リセット・アンプルを射たれそうになり、「007」はレーザー光線で真っ二つにされかけた。)、その窮地から間一髪で助かったこと、その時に敵の作戦のことが語られるという所、次に意識を取り戻した時には別の場所にいたということ、というように、一連の状況が全く同じである。また、この時、敵にすれば主人公を始末してしまう絶好のチャンスであったのだが、この時に始末しなかったことが後に結果的に敗北に繋がることになったというのも共通していることである。
尚、この共通点(「主人公のピンチ」「敵の勝利目前」)は、「ケータイ刑事」と「007」に限らず、同じようなジャンルの作品であれば、ほぼお約束ということの出来る展開でもあった。
一方、相違点は、「ケータイ刑事」では記憶リセットのアンプルを射たれようとなったが、これは命に別状があるものではないが、「007」では正に命を落とす寸前だったということ、「ケータイ刑事」では敵が作戦を語るということになったが、「007」ではこの時にはボンドはまだ敵の作戦の内容までは知っていなくて、作戦名だけを知って状態であり、主人公が口にしたということ、「ケータイ刑事」では零ちゃんは多少の体の自由があった(ポケットから携帯電話を取り出すことが出来た。)が「007」ではボンドは両手両脚をしっかりと固定されていたため、身動きすら出来ない状況だったという点がある。
次回もまたまた「シチュエーション」ということで記していきます。何が登場するのかはお楽しみに。
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